第1061冊目  スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則 [単行本(ソフトカバー)]カーマイン・ガロ (著), 外村仁 解説 (その他), 井口耕二 (翻訳)

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

全身で伝える3つのステップ


1985年、スティーブ・ジョブスは、当時のCEO、ジョン・スカリーとの権力闘争に敗れ、アップルから去った。そして11年後の1996年、ジョブスのNeXTを4億2700万ドルで買収するというCEO、ギル・アメリオの発表とともに勝利の帰還をはたす。「スティーブの気迫と意気込みに参ってしまった」とアメリオは『アップル薄氷の500日』(ソフトバンククリエイティブ刊)に書いている。「彼が生き生きと立ち働く様子、気迫全開で動き回る様子、すごい表現力を発揮する様子などをはっきりと覚えている」。

ジョブスが一番生き生きとするのはステージ上である。無限のエネルギーを持っているかと思うほどだ。このときジョブスが行うことが3つある。誰でもできるし、しゃべるスキルやプレゼンテーションのスキルを高めたいなら必ずすべきことだ。

アイコンタクト、開いた姿勢、手をよく使う――の3つである。


アイコンタクト


ジョブスをはじめとする優れたコミュニケーターは、聴衆と視線を合わせることがとても多い。スライドやメモを読むこともめったにない。ジョブスもメモを使わないだけではなく、デモのときは見えないところにメモを用意していることが多い。

アップルのプレゼンテーションソフト、キーノートには、プロジェクター側にスライドを表示した状態でスピーカーがノートを見られる機能が用意されている。ただジョブスの場合、読んでいてもそうだとわからない。ほぼ常に聴衆とアイコンタクトを保つからだ。スライドをみる場合も一瞬だけで、すぐに意識すべき相手、自分を見ている人々へと注意を戻す。

ほとんどのプレゼンターは、スライドに書いた文字を読むことに時間を費やしすぎる。デモになると、アイコンタクトをまったくしなくなる人も多い。アイコンタクトがある人のほうが正直、信頼できる、誠実、自信に満ちているなどと感じることが研究で確認されている。逆にアイコンタクトを避ける人は自信がなく、リーダーとしての素質がないと感じてしまう。アイコンタクトを避ければ、聴衆とのつながりがなくなってしまうのだ。

ジョブスがしっかりしたアイコンタクトを取れるのは、何週間も前からプレゼンテーションの練習をするからだ。だから、各スライドに何が描かれているのか、スライドごとに何を言ったらいいのか、すべてを把握している。練習を繰り返すほどコンテンツが自分のもととなり、聞き手とのつながりを作りやすくなる。ほとんどのプレゼンターは練習不足であり、それがあちこちに現れてしまうのだ。