第986冊目  武器としての交渉思考 (星海社新書) [新書]瀧本 哲史 (著)

武器としての交渉思考 (星海社新書)

武器としての交渉思考 (星海社新書)

反応速度は超重要


一見バカバカしく思えることですが、超重要事項として、交渉では「反応速度を速くする」ということも大切になってきます。

仕事のメールをもらったのにいつまでも放っておいたり、電話の伝言をそのままにしておいたりすると、一発で相手は「この人は自分のことを軽視している」と感じます。

あなたも逆の立場であれば、そう思うはずです。

どんなに忙しくても、すぐ反応する。逐一、対応する。頻繁に連絡する。

本当に時間がなくても返事ができなときは、電話でひと言伝えたり、2、3行のメールでもいいので、「あとでちゃんと折り返します」と伝えなくてはなりません。

これが、交渉を有利に進めるうめでも絶対的に重要です。

「そんなにたいした問題じゃないでしょう?」と思われるかれしれませんが、本当にきわめて重要なので、声を大にしてお伝えしたいと思います。

さきほども述べましたが、自分が重要だと思われているかどうかについて敏感に反応する人(エグゼクティブはほとんどそうです)は、あなたの対応スピードを細かく観察しています。

「最近、あっちから連絡がぜんぜん来ない」「あいつは挨拶にも顔を出さない」とか「メールを3日間も放置された」などの理由で、重要な仕事の取引が失敗した話は、数限りなくあります。

出版の世界でも、作家は担当編集者のちょっとした振る舞いに異常なほど敏感です。編集者の側はちっともそんなつもりはないのに、「最近、自分が出した本の売れ行きがいまいちだから、あの編集者はちょっと俺を軽んじているのではないか……?」などと怒って暴れる作家は珍しくありません。

そういう人の狙いは「どれだけ自分が大切にされているか」を確かめることです。彼らがワガママを言ったり暴れたりするのも、相手の反応を試すのが目的なのです。

その「ゲーム」に全面的につき合う必要はありませんが、交渉に勝つためには相手の心理の背景を理解することが大切です。

営業マンが意味もなく頻繁に取引先に足を運んだり、「情報提供」などと称して連絡をとったりするのも、バカバカしいように見えて、じつはすごく効果があります。

相手が自分にとって重要な交渉相手だと思うならば、できるかぎり反応速度を速めて、連絡を頻繁にとることが大切であることを覚えておいてください。