第985冊目  “司法試験流” 勉強のセオリー (NHK出版新書 375) [新書]伊藤 真 (著)

“司法試験流

“司法試験流"勉強のセオリー (NHK出版新書)

相手の共感を呼び起こす話し方を意識せよ


プレゼンに臨むにあたりぜひとも把握しておきたいのは、プレゼン相手の性格や性質です。取締役を相手にするのか、現場の人を相手にするのか、その両方が混在しているのか、または、例えばITなど専門知識を持っている人なのか、持っていない人なのか。テーマについて経験のある人なのか、ない人なのか、などです。どういう人が出席するのか、どういう人を相手にプレゼンをするのかによって、その方法も変わる。これは、文書の読み手の目的を意識するのと同様、非常に重要なことです。

また、聞き手の理解しやすいような話し方を心がけることも大切です。わかりやすい例で言えば、私が講演会などで年配の方を相手に話すときには、当然、できるだけゆっくり話していきますし、若い人の場合には、むしろスピード感を持って、テンポよくポン、ポン、ポンと話していく。つまり、相手の思考のスピード、リズムに合わせるように話していくことです。

そこで、さらに効果的なのはレジュメやパワーポイントなどをうまく活用し、図を用いながら説明することです。第1章でも触れたように、図解することは、物事の本質が見えやすくなるというメリットがありますから、人に何かを伝えようとするときにも、相手の理解度を高めるという点において極めて有効です。

また、聞き手の思考を促すために、具体例を豊富に出すという点にも配慮するといいでしょう。その際、気をつけたいのは突飛な例ではなく、あくまでも具体的な数字や第3者の言葉などの一般論を引用すること。要は、自分が提案することに客観的を持たせるということなのです。そうした具体例を挙げることによって、相手も「なるほど」「そういうことってあるよな」と共感を持ちやすくなる。それは結局、相手から信頼を得ることにもつながるのです。

先にも触れたように、やはり、人を説得するには、まず相手の共感を得ることが大切です。話す側と聞く側、両方が共有できる価値からスタートしないことには、絶対に説得することはできません。説得するということは、つまりは納得してもらうことです。

「この人に言っていることは理解できるけれども、果たして本当なのか、信用できないな」。これでは当然、納得などしてもらえないわけです。

ですから、納得してもらうためには、客観性を持たせた具体例を挙げることも大切でしょうし、もっと言えば、信用できる態度か否かが求められるのだと思います。積極性、社交性、専門性、誠実さ、謙虚さ、節度のある態度といった、言わば個人の魅力が重要となる。間違っても相手よりも上に立とうと思ってはいけません。

簡単に言うと、相手に対して尊敬の気持ちを持つことが大切です。本心から、相手の会社や相手のことを理解し、敬意を払う。「本当に素晴らしいことをしていますね」「価値のあるお仕事をされていますよね」と、相手を立てるということです。その思いが相手に伝われば、「この人の言っていることは本当だな」「ああ、そうだよな」と納得しれもらえるでしょうし、さらには、その先にある満足感を感じてもらえるところにまでいくのだろうと思います。