第970冊目  一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫) [文庫]アンソニー・ロビンズ (著), 本田 健 (翻訳)

一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

マイナス感情を撃退する簡単な方法


それとは対照的に、夫婦がお互いに相手に我慢できなくなるのは、否定的なアンカリングが原因の場合が多い。

どんなつき合いにも、相手の存在がプラスよりマイナスと結びついてしまう時期があるものだ。そのような状態の時に、いつも顔を合わせていると、マイナスの感情が相手と結びついてしまいので、お互いに顔を見るのもいやになる。

そして相手を傷つけたり、怒らせたりする言葉をぶつけたり、そのうちに誰か他の人とつき合いたくなってくる。それも、できれば前向きな経験だけを思い出させてくれる人とだ。

ある日、妻と私が深夜にホテルにチェックインした時のことだ。駐車係もペルボーイも居なかったので、フロントにいた人に車を駐車場に入れて、ベルボーイに荷物を部屋まで運んでもらうように頼んだ。承知しまいたと言うので、私たちは部屋でくつろいでいた。

一時間経ったが、いっこうに荷物が運ばれてくる気配がないので、フロントに電話をかけた。手短に言えば、荷物はすべて盗まれていた。クレジットカード、パスポート、小切手帳――しかも小切手はすべてサイン済みだった。

二週間分の旅の荷物が盗まれてしまったのだから、その時の気持ちたるや、暗澹たるものだった。腹が立って、気も動転している最中に、何度も妻の顔を見た。彼女もまた腹を立てていた。

十五分ほどして、私は腹を立てたところで何の足しにもならないことに気づいた。常日頃から「この世で起こることにはすべて何らかの理由がある」と信じているので、この経験からもきっと何か得るものがあるはずだと思い直した。そうやって精神状態を変えてみると、少し気分が良くなった。

しかし十分後、妻を見ると、また腹が立ってきた。いつもの魅力的な彼女はどこへ行ってしまったんだ、いったいこれはどういうことだ、と自問自答した。つまり、私は荷物を盗まれたという不愉快な感情を妻と結びつけていたのだ。

もちろん妻には何の責任もないが、彼女を見るだけで最低の気分になった。私がそのことを彼女に打ち明けると、なんと彼女も同じことを考えていたと言うではないか。

となれば、おかしな結びつきは打ち壊し、一緒にわくわくできる、前向きなことをするしかない。十分後には、互いの顔を見つめながら、最高の状態になっていた。

成功するための秘訣は、消極的になったり、能力を発揮できない状況に自分を追い込むきっかけとなるものを自分周りから取り除くと同時に、自分と周囲の人たちに前向きなアンカリングを行うことだ。

それには、アンカリングの「きっかけ」(良いもの、悪いもの)の一覧表をつくるといい。きっかけになるのは視覚的な刺激か、聴覚的な刺激か、体感覚的な刺激かに注意しよう。

そして、否定的なアンカリングは崩し、前向きなアンカリングは最大限に活用するのだ。

前向きな状態を効果的に引き出すことができれば、自分だけでなく、仕事仲間をはじめとする周りの人々を鼓舞し、気持ちを明るくしてやれる。その時、特定の触り方や話し方、声の調子でアンカリングをすること。

すると、いつでもやる気のある状態を引き出せる。仕事ぶりも良くなり、会社の業績も上がり、みんなが幸福になれる。あなたにはそうするだけの能力がある。