第898冊目  「権力」を握る人の法則 [ハードカバー]ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則

客観的に自分を評価する

自分を変えるためには、まずはいまの自分をありのままに評価して、何が足りないのかを見きわめる必要がある。この足りないところこそ、最も成長が期待できる。とは言え客観的に自分を評価するのはむずかしい。人は誰しも自分ことをよく思いたいので、つい点が甘くなる。自分を批判する人は遠ざたくなるし、自分に都合の悪い情報は、できることなら無視しようとする。そして、こう言い聞かせる――これまでうまくやってこられたのだから、自分はなかなか優秀である。だからこれからもこのままやっていけばいいのだ、と。エグゼクティブ・コーチングの草分けであるマーシャル・ゴールドスミスも、自らの経験に基づいて書いてベストセラー『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』の中で、自己弁護に走る癖を直すのはむずかしいと認めている。地位が上がるにつれて身につけるべきものは増えていき、新たなスキルを身につけるにはかなりの努力が必要だから、本人の断固たる意志が欠かせない。ところが自分に足りないものがあると認めるのは、自分が思ったほど優秀ではないと認めることになるため、それができない人がかなり多い。

ゴールドスミスは、自尊心の強いエグゼクティブたちのコーチ役を務めてきた経験に基づき、自分の欠点を認めたがらない(それどころか否定する)癖を正すコーチング技術を開発しようと考えた。その一つが、やってしまったことについてフィードバックするのではなく、これからやるべきことについて「フィードフォワード」を与える方法である。たとえば、次にシニアマネジャーに昇格したらどうふるまうべきか、といったことをアドバイスする。キャリアの次のステージという望ましい将来についての指摘なら、相手もさほど自己防衛的にはならない。これは非常に賢いやり方である。将来の目標達成のたの自分を変える方が、過去の失敗を振り返って反省するよりも、はるかに意気が揚がるだろう。