第895冊目  理科系の作文技術 (中公新書 (624)) [新書]木下 是雄 (著)

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

文は短く


仕事の文書は、短く、短くと心がけて書くべきである。

ある人は平均50字が目標だという。本書の1行は26字だから、ほぼ2行。私も短く、短くと心がけていはいるが、とてもその域には達していない。

私の考えでは、本質的な本題は文を頭から順々に読み下してそのまま理解できるかどうかであって、すらすらと文意が通じるように書けてさえいれば、長さにはこだわらなくていい。ただ、長い文はとかく読みかえさないと判らないものになりがちだから、「短く、短く」という心得が強調されるのだと思う。


書くべきことが頭の中にびっしり詰まっていて、いわば内圧の高い状態は極めて望ましい。しかし、それを外に押し出して文章にうつすといには、流れを冷静にコントロールする必要がある。どんなことを心がければいいか、ここではさしあたり次の三つの心得をあげよう。

(a)まず、書きたいことを一つ一つ短い文にまとめる。

つぎに

(b)それらを論理的にきちっとつないでいく(つなぎのことばに注意!)。

ここで〈つなぐ〉というのは必ずしも〈つないで一つの文にする〉意味ではない、短い独立の文を、相互の関係がはっきるわかるように整然と並べることができれば、むしろそのほうがいいのである。

以上の過程を通じて、どの文を書くときにも

(c)いつでも「その文の中では何が主語か」をはっきり意識して書く

ことが必要だ。主語を文字に書き表すことはかならずしも必要ではない。しかし、自分がいま書いている文では何が主語なのかはいつも明確に意識していなければならない。とくに、短い文をつないで長い文をつくるときには、「長い文ぜんたいの主語を何にするか」を考えて、修飾語の表現を調整していくこと肝要だ。