第866冊目 采配 [単行本(ソフトカバー)]落合博満 (著)

采配

采配

3割の壁

3割を超えられない選手の傾向を分析すると、3割を目標にしているケースがほとんどである。一方、3割の壁を突破していく選手は、一度も3割をマークしていないにもかかわらず、3割3分あたりを目指している。毎試合3打数1安打なら、打率は3割3分3厘になるというのが目標になる根拠だが、そうやって「達成するのは不可能じゃないか」と自分でも思えるような目標を設定して初めて、現実的に達成可能な目標をクリアできるのだ。

会社から「10の契約を取れ」というノルマを与えられたら、自分の目標は13〜15に設定すべきだ。そして、できることなら「僕は15の契約を取りますよ」と周囲に公言するのがいいだろう。目標というものを、心に秘めているだけでは達成への底力が生まれない。わずかの差で達成できなかった時、「みんな目標を下回っているんだから」などと自分の言い訳を探して納得してしまうものだからだ。

15の契約を取ると公言し、12しか取れなかった。「おまえは口だけだな」と上司や先輩から言われれば、一番悔しいのは自分だろう。だが、心の中に浮かぶのは「みんな目標を下回っているんだから」という言い訳ではなく、「今度こそ見ていろよ」という反骨心になるはずだ。自分からの自尊心に点けるのも、目標達成の手法のひとつだと思っている。

また、達成不可能に思える目標を立てることで、今までのやり方や視点を変える必要があると気づくこともある。プライドを捨てて一から教えを乞い、基本からやり直すことで、大きな目標を達成する人もいる。