第957冊目 「権力」を握る人の法則 [ハードカバー]ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則

第一印象の研究

第一は、時間の経過とともに注意力が低下することである。多くの人は、最初に受けた印象で判断を下した後は気が緩んでしまい、後から受ける印象に前ほど注意を払わなくなる。たぶんあなたも初対面の人と会うときには、相手の言動に注意を払い、どういう人間か探ろうとし、相手のタイプを知り、さらに自分と合いそうか、自分に好意的か、はたまた自分の役に立ちそうか見きわめそうとするだろう。やがて「だいたいわかった」と考えると、いちいち気にかけなくなる。次に会うときには、相手のことはおむねわかった気でいるので、こまかいニュアンスなど聞き流しやすい。

第二は、情報の選択的取捨である。すなわち、第一印象が定まってしまうと、それと一致しない情報を無視しがちになる。とりわけ、「第一印象→相手の評価→結果」が連続的に起きる場合に、そうなりやすい。たとえば面接の際に相手の印象に基づいて採用を決め、その後になってから「こいつを採用したのは失敗だった」と認めるのは、誰しも気が進まない。そこで、第一印象と一致しない情報は無視して、一致する情報のみを偏重する傾向が生まれる。

第三は、第一印象の実現行動である。すなわち人間は、自分が抱いた第一印象が正しくなるような行動を自らとるのである。採用面接を対象にしたある調査によると、応募者に対する面接官の第一印象は、入社試験の成績や履歴書に基づいて、面接が始まる前にすでに形成されている。いざ面接が始まると、応募者に好意的な印象を抱いている面接官は相手に気遣いを示し、自社の良いところを強調し、職場環境について積極的に情報提供を行い、応募者にあまり意地悪な質問を発しない。こうして、自分が抱いたイメージ通りになるような審査を行うことが判明した。また別の調査では、相手を優秀だと思っている人は、相手の得意分野に関する質問を発したいり、能力を発揮する機会を与えたりする傾向があることがわかった。このように、人はすでに抱いている印象や伝え聞いている評判を強める行動を取りやすい。その結果、当初の印象や評判は結果的に
正しくなる。