第900冊目 ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫 [文庫]

G.キングスレイ ウォード (著), G.Kingsley Ward (著), 城山 三郎 (翻訳)

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫

批判はどんな武器にも負けない破壊力を持つので、その扱いには熟練が必要で、与えるときには細心の注意を払わなければならない。さもないと不当に射程内に入った気の毒な人は、精神的に打ちのめされる。その反面、批判は極めて効果的な道具である。賢明な批判者が善意から巧みに与えるならば、それは与えられた人にとって、人生の途上での大きな手助けになるだろう。

建設的な批判は非常に手際よく与えられるため、受け取るほうが批判されていることにほとんど気づかないので、良い方向へ導くための、さらに高みへと駆り立てるための、強力な推進力になる。行き当たりばったりに、深く考えないで与えれば、期待はずれの結果を招くだろう。批判が建設的になるか、相手が間違いを改めてよりよい結果をあげようと決意するか、傷ついて志気を失うかは、紙一重の差でしかない。もし君の雇用主としての批判が社員から後者の反応を引きだす場合には、その社員の効率は何日も、何週間もがた落ちになるだろう。社員が、正反対の反応を示すように努めることが君の任務である。

人がみな違うこと、それぞれの心の動きが違い、性格や性癖も多様であることを、私たちはつい忘れがちある。思慮深い批判を与える人は、決してこの事実を忘れない。ある人のバラがほかの人にとってしばしばタンポポであることを知っていて、自分の意見を述べるまえに、批判とそれを受ける人について、入念な評価をする。職場では、人びとが好ましい雰囲気のなかで、ある程度楽しく働くことが大切である。ある人の振舞い、態度、あるいは生活様式が他人に不快感を与え、全体の効率を下げる場合には、その人多少の批判を受けるのは当然だろう。しかし、その批判をなるべく役に立つ。建設的なものにするように。