第785冊目 プロアナウンサーの「伝える技術」 石川顕/著

プロアナウンサーの「伝える技術」 (PHP新書)

プロアナウンサーの「伝える技術」 (PHP新書)

目次


第1章 いい声はだれでも出せる
第2章 話術は「間術」である
第3章 スピーチ・プレゼン達人術
第4章 「つかみ」の極意
第5章 これはNGフレーズです
第6章 日本語の力


落語に学ぶ話のメリハリ


スピーチのうまい人は、このメリハリがはっきりしています。たとえば、最初に「今日はこの話を三つしましょう」など、あらかじめ前置きをしてから始めることもテクニックの一つでしょう。すると聞き手は「あ、これが一つ目かな」「これが二つ目だな」と頭の中で整理しながら聞いてくれるので、とても伝わりやすくなります。無意識にメリハリができるのです。


またスピーチの基本として、①主題、②なぜ(その理由)、③具体例、④結論の四段階に分けると聞き手にわかりやすくなります。たとえば、短い例をあげてみましょう。


私はアンパンが好きです。なぜならば、子どものころいつもお腹が減っているときに、三軒先のパン屋さんからパンが焼ける匂いがする。すると妙にお腹が減ってきて、母親にそのつどねだっては五〇円もらって、パン屋さんに走りました。だから、私はあのパンの匂いを嗅ぐだけで、一瞬のうちに三十年前のむかしに戻れる。とくにパッと割ったときに、ふわーっと焼きたてのパンから上がってくるあの湿気、たまりません。そんなわけで、いまでもパンが好きです。アンパン大好き。


「私はアンパンが好きです」という主題から始まって、「なぜならば」とその理由が述べられます。最後に「(こういう理由)だから〜です」という結論も入る。最初に行ったことが鮮明になり、最後にもう一度くりかえすことで一つのスピーチとしてもとまります。


主題「私はアンパンが好きです」
理由「なぜならば、子どものころいつもお腹が減っているときに、三軒先のパン屋さんからパンが焼ける匂いがする。すると妙にお腹が減ってきて、母親にそのつどねだっては五〇円をもらって、パン屋さんに走りました。だから、私はあのパンの匂いを嗅ぐだけで、一瞬のうちに三十年前のむかしに戻れる」
具体例「そんなわけで、いつでもパンが好きです。アンパン大好き」


①主題、②なぜ(その理由)、③具体例、④結論の段階ごとに話が区切られているので、聞いていて整理しやすい。「ダラダラどこまで続くの?」と聞き手に心配を与える懸念がありません。メリハリを意識してこの四段階でまとめれば、あれもこれもと詰め込みすぎて散漫になり、印象が薄れるのを防いでくれます。


ちなみにこの事例ですが、ある放送局のアナウンサー試験の最終面接で、社長が「あなたの何が好きですか?」という質問を五人にしたところ、緊張しきっていた四人は「○○です」とひと言で答えたのに対し、合格したのが、このメリハリ話法でアンパンの話を語った受験生でした。


これを応用すれば、自己紹介のスピーチにもメリハリをつけることができます。①挨拶、②フルネーム、③本題(出身地、趣味、座右の銘など)、④締めの挨拶、といった具合にあらかじめ意識的に分割して構成しておけば、何を話そうかと絶句しなくてすむはずです。


あなたに、すべての良きことが、なだれのごとく起きますように♪


今日の声に出したい言葉


笑顔効果は自分が考えている以上に大きなものです。「あなたにお会いできてうれしい」という笑顔をつくってみてください。相手も、何となくうれしい気持ちなるものです。――荘司雅彦


編集後記



プロアナウンサーの「伝える技術」 (PHP新書)

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