第781冊目 人の心をひらく技術 仕事と人生が変わる「聞き方」「話し方」 小松成美/著

人の心をひらく技術

人の心をひらく技術


目次


第1章 「人とつながる」現場から(自分のすべてを投げ出して聞いた100時間―アストリット・Kとの邂逅

人間に向き合って胸の底にある言葉を導く―中田英寿との仕事

リスクを冒した第一の質問―イチローとの対決 ほか)

第2章 人の心をひらく(ステップ 人の心をひらくマナー

ステップ 会話を深めるスキル

ステップ コミュニケーション力を上げる)

第3章 「人間を聞く」ということ(誰にでも必ず話したいことがある―一期一会という大切な機会に

野心からの解放―和の伝統を受け継ぐ職人との交流

「聞く」技術のさらに上へ―トップアスリートとの現場 ほか)


相手にあわせて臨機応変


自分の思いを伝えるとき、話すこと以上に聞くことが重要だと述べました。聞くことと話すことの比率を数字に表せば、8対2です。それほど、聞くことに比重を置いて、私は人に向き合っています。


インタビュアーというと、答えを導き出すための質問の発し方に専門技術を持っている、つまり「話す」ことのプロだと思う方が多いかもしれません。けれども、むしろ「聞く」ことに細心の注意を払います。


ますは、相手はどんな言葉を選んで話しているかを注意深く聞きます。たとえばきちんとした丁寧語、尊敬語、謙譲語を使い分けて話す人なら、その人が折り目の正しい大人だということがわかると同時に、聞き手である私と一定の距離感を持とうとする意図を汲み取らなくてはなりません。


年齢の問題もありますが、仮に同年齢の人が私に対してきちんとした敬語を使っていたら、その人は一気に相手に飛び込むタイプではなく、順序立てて距離を詰めていこうとするタイプだとわかります。


一方、初対面でも「私たちこんなふうにこの場で出会ったなんて、運命ですね」というふうに話してくる人もいます。このタイプの人は親しげな言葉を使うことで相手の心に飛び込み、一気にお互いに距離を縮めようとしているのだと想像できます。


ます、相手の言葉をよく聞いて、相手の価値観とか望んでいる対話の方法を見きわめることが大事です。それがわかると適切な対処法が見えてきます。


きちんとして敬語を使って話す人に「そうだね、いいんじゃない?」とは絶対に言えません。「そうですね、おっしゃるとおりです。私もそう思っております」といった言葉でコミュニケーションを取るのがマナーですし、その人が保ちたいと思っている距離感に応える気づかいになります。


逆に、フレンドリーに会話を交わそうとする人に、かたくなに敬語を使い続けたら、相手のせっかくのアプローチを拒絶することになります。


前にも述べたとおり、「人にはマナーを尽くす」が基本ですが、具体的な会話のやりとりについては、相手次第でもっとも適切な形に変えなければなりません。そのフレキシビリティも大切です。


そんな能力は持っていない、とあきらめないでください。それは、注意深く「聞く」ことによって可能になります。相手が今どんな考え方でこの場所に臨んでいるのか。自分や他の人に、どんなメッセージを発しようとしているのか、それがどんな性質のものなのか、どのくらいの強さなのか――。静かに気持ちで耳を澄ませて「聞く」ことで、それはきちんと察知することができるはずです。


あなたに、すべての良きことが、なだれのごとく起きますように♪


今日の声に出したい言葉

編集後記

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