第722冊目 反対尋問 ウェルマン/著 梅田昌志郎/訳

反対尋問 (旺文社文庫 644-1)

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目次





有名な反対尋問家とその作法


反対尋問のために、こういう勤勉な準備をしたことが、ベンジャミン・F・バトラーの成功した一因だった・ある時、依頼を受けたあるい重要事件の証人を反対尋問するため、彼は何日もかけて蒸気機関車のあらゆる部分を調べあげ、自分の手で運転できるまでになった、という。またある時は鉄道の修理工場で一週間をすごし、うち何日かは上衣を脱ぎ手にハンマーを振って鉄がどこまで圧力に耐えられるか確かめたりもした――それが裁判を左右する転換点だったからである。彼自身の言葉をかりれば「自分の事務所に座して、ただ連れてこられた連中の話を聞くだけで準備する弁護士は、まず敗けときまっている。完全に仕事をする弁護士、入念に準備をする弁護士は、事件をどの面からもくまなく調べ、また科学的な研究もたくさんしなければならないものである」こういうおどろくべき徹底性と鋭さの反面、愉快なユーモアと活きいきとした機智のあったことが、バトラーの大きな特徴だった。


彼は大弁護士でもなく、ルーファス・チョートのような大弁護士でもなかったが、それでもよくチョートを敗かしたものだった。彼の得意な武器は反対尋問だった。彼は材料もたっぷり持ってたし、戦略にも長けていた。彼の域に迫れる者はごく少者だった。チョートも法廷弁護士の細かい策略は完全にマスターしていたが、チョートはさらに、真の大弁護士のもつ大きな構想力や弁論能力を身につけていたのだ。バトラーの成功は熱意によるものであり、加えて用意周到さがあったのだ。良心を超えた策略などというものではない。


あなたに、すべての良きことが、なだれのごとく起きますように♪


今日の声に出したい言葉


「反対尋問――弁護士に要求されるあらゆる技能のうち、最も稀で、最も役に立ち、そして最もむずかしいもの……この技能は、つねに、真実を調べるうえで一番確かな方法であり、宣誓以上の保証になると考えられている」――コックス

 

編集後記




反対尋問 (旺文社文庫 644-1)

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