第649冊目 早大院生と考えた文章がうまくなる13の秘訣 近藤勝重/著

早大院生と考えた文章がうまくなる13の秘訣

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文章上達の早道は?
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Q 早く文章がうまくなりたいんですが、いい方法はないでしょうか。

A サル真似ですね。サル真似は人間しかできません。いい文章を真似る。これしかないというのが多くのみなさんの一致した意見です。「真似る」は「学ぶ」なんです。



Q 「みなさんの意見」っておっしゃいましたが、みなさんて、どういうことですか?

A 真似る、ということではまず小林秀雄ですね。「模倣は独創の母である。ただ1人のほんとうの母親である。2人を引離してしまったのは、ほんの近代の趣味に過ぎない。模倣してみないで、どうして模倣できぬものに出会えようか」と「モオツァルト」に書いています。



Q ほかにはどういう方が?

A 谷崎潤一郎も『文章讀本』で第1に「できるだけ多くのものを、繰り返して読むこと」、第2に「実際に自分で作ってみること」と言っています。要は真似て学ぶということでしょう。



Q 念のため何人か、ほかの方々の意見も聞かせてください。

A 丸谷才一さんも『文章読本』で「作文の極意はただ名文に接し名文に親しむこと、それにつきる」とおっしゃています。歴史小説の第1人者だった吉村明さんはエッセイで「志賀直哉梶井基次郎川端康成大岡昇平永井龍男氏らの諸作品が、私の眼の前にそびえていて、私はそれらの諸氏の秀れた作品の文章を筆写したりしていた」とお手本にした作者名を挙げているほどです。数年前には清水義範さんが夏目漱石坊っちゃん』を原稿用紙に書き写した話など、名文を手書きで写す文章修業法を『文藝春秋』特別版「言葉の力」で披露していました。


海外の作家ですと、世界的なベストセラー作家、スティーヴン・キングが『小説作法』で「感動した作品の影響で、その文体に染まることは一向に構わない」と書いています。



Q 真似るというのは具体的に書き写すということでしょうか

A はい、それがいいようですね。清水さんは言うように手書きがいいと思います。手で書けば1字1句が伝わってきて記憶にも残ります。みなさんは中、高校時代、試験勉強で要点をノートにまとめて覚えたりしなかったですか。ぼくらの時代はみんなそうして試験に備えたものです。


ぼくの場合、文章の勉強は吉行淳之介さんの『暗室』ほか何冊かがテキストでした。「仕草、男/女」「情景/季節」「こころ」といったぐあいに、いろいろ項目を設けて1冊ノートを作りました。それで書く自信がかなりついた気がします。この会話の文を地の文でどう受けたらいいのだろう。そういった文例もノートに記しておきましたので、いまも見ることがありますね。



あなたに、すべての良きことが、なだれのごとますように♪


目次


文章表現の基本「人プラス物」
何を描写し、何を説明しないか
文章をわかりやすくする工夫
情景描写と心模様
文章は体験がすべて
書きたいことの組み立て方
人物・感情表現法
五感と比喩
自分自身をどう表すか―書き出しから終わり方まで
間と推敲
「書く」より「聞く」
事実から真実へ
文章力がつく読書術


今日の声に出したい言葉


ものを覚える時は「単に何回も棒読みする」よりも「暗唱して、間違いを訂正しながら覚える」ほうがずっと、記憶率が高くなる。――有賀ゆう

 

編集後記


文章が上手くなるには名文を真似ること。


ついテクニックや裏技に頼りたくなりますが、文章が上手になるには、名文を真似るしかないのですね。


本当は手書きが書き写したほうがいい思いますが、私はパソコンで書き写すことにします。


慣れ、慣れしかないですね。


早大院生と考えた文章がうまくなる13の秘訣

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