第639冊目 影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか ロバート・B.チャルディーニ/著 社会行動研究会/訳

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

目次


第1章 影響力の武器
第2章 返報性――昔からある「ギブ・アンド・テーク」だが……
第3章 コミットメントと一貫性――心に住む小鬼
第4章 社会的証明――真実は私たちに
第5章 好意――優しい泥棒
第6章 権威――導かれる服従
第7章 希少性――わずかなものについての法則
第8章 手っとり早い影響力――自動化された時代の原始的な承諾


数量を限定することの効果


私たちが物事の価値を決める際、希少性の原理がこれほど強力に働いているのなら、承諾誘導の専門家たちも当然、彼らなりに同じような操作を行おうとするでしょう。おそらく、希少性の原理が最も明瞭に使われるのは「数量限定」の戦術だと思います。


そこでは、消費者が、ある製品の供給が不足しておりいつまで残っているか保証できないと知らされます。私は、さまざまな組織に潜入して強制承諾の戦術を研究している間に、多くの状況で繰り返し数量限定戦術が使われていることを知りました。


たとえば、「このエンジンのついたコンヴァーティブルは国内に5台と残っていません。もう生産していませんから、これたなくなればそれっきりです」「この分譲地の中では、角地はもう2区しか残っていませんが、これがその1つなんです。もう1つはうっとうしい西向きですから、お気に召さないと思います」「生産中止になっていて、また手に入るかどうかわかりません。そのところを考えていただいて、今日のうちにもう少しお買い求めになっておいたほうがよろしいですよ」


数に限りがありというこうした情報は、本当であるときも、全くのでたらめであることもありました。しかし、いずれの場合も、消費者に商品の希少性を信じ込ませ、それによって消費者の目に映る商品の直接的な価値を高めようとする目的があったのです。


私は、手を替え品を替え、この単純な策略を駆使する実践家たちに、不承不承ながら賞賛の念が生じてしまうのを認めざるを得ません。


最も感心されたれたのは、この基本的なアプローチを論理的に行き着くところまで推し進めた場合です。商品を、最も希少性が高い時点、すなわち、もはや手に入らないと思い込ませた状況で売りさばくのです。


その戦術は、私が調べたある家庭電器店で完璧なまでに行われていました。そこでは、在庫品の30%から50%が常に特売に出されていたのです。たとえば、ある特売品にかなり興味を持って、遠くからやってきたカップルがいたとしましょう。興味があることを示す手掛かりは至るところにあります。たとえば、普通の客以上にその商品を試したり、脇にある説明書をめくてみたり、商品を前にして話し合ったりしています。でも、それ以上の情報を店員から聞こうとはしません。そんな様子をカップルを目にすると、店員が近づいて行ってこう言うのです。


「このモデルがお気に召しまたようですが、ほんの20分ほど前に別のお客様にお売りになっていまったのです。確かそれが、私どもの最後の品だったと思います」


客は間違いなく失望します。もう手に入らないとなると、その品に急に魅力を感じるようになるのです。たいていの場合、カップルの1人が、店の奥や倉庫、あるいはどこか別の場所に1つくらい残っていないかと尋ねます。すると、店員が答えます。


「そうですね、あるかもしれません。調べて参りましょう。お客様のご要望の品はこのモデルで、もし在庫がありましたらこの値段でお買い求めいただける、ということでよろしいでしょうか」


ここに手腕の見事さがあります。希少性の原理を従って、客が商品はもう手に入らないかもしれないと思い、それゆえ、この上なくそれに魅力を感じ始めた時に、商品を購入することにコミットさせられるのです。多くの客はこの非常に弱味のある時に、買うことを同意してしまいます。そして、在庫が1つ残っていましたという知らせを(必ず)持って戻ってくるとき、その店員はペンと契約書を手にしているのです。


望みの品が手に入ると知らされると、実際のところ客の中には、それほど魅力的なものではないと思い直す人がいるかもしれません。しかし、たいていの場合、その時はもう後に引けないところまで契約の手続きを進んでしまっています。それより前の決定的な時点で、公にコミットした形で行われた購買の決定がまだ生きているのです。結局、彼らは購入することになります。


あなたにすべてのよきことが雪崩ごとく起きますように♪


今日の声に出したい言葉


顧客の絞込みとは、ひとつの条件ではなく、2つの条件が必要。「女性限定!」というのは、絞込みのためのひとつの条件。しかし、これではお客は振り向かない。「20代の女性限定!」といえば、ふたつの条件設定となり、お客は振り向きはじめる。「20代の女性で、小さなお子さんがいらっしゃる方、限定!」といえば、対象客は、誰もが振り返る。――神田昌典


感想


今日から数量限定を実践します。


私は人に本を貸すことがあります。貸した時にはそれほど魅力を感じかなったのですが、貸した後になると妙にその本が読みたくなってしかたがないという経験をよくします。


すぐに読める状態ですと安心するのですが、自分の手もとから離れると「もう読めないかもしれない」という思いが働いて再び読みたいという欲求がおきます。


私は数量限定を実践します。


影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

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