第629冊目 古代への情熱 シュリーマン自伝 シュリーマン/著 村田数之亮/訳

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)

目次


1 少年時代と商人時代(一八二二‐六六)
2 最初のイタカ、ペロポネソス、トロヤ旅行(一八六八‐六九)
3 トロヤ(一八七一‐七三)
4 ミケネ(一八七四‐七八)
5 トロヤ、第二回と第三回発掘(一八七八‐八三)
6 ティリンス(一八八四‐八五)
7 晩年(一八八五‐九〇)
8 シュリーマン略年譜


6ヶ月で外国語を話す方法


まず私は読みやすい筆跡を習得しようとして、ブリュッセルの有名な書家マネーに20時間の授業を授業をうけて、十分に目的を達した。つづいて、自分の地位をよくするために、熱心に近代語の学習をはじめた。私の年収はわずか800フランであったから、そのわずかばかりを学習につかい、他の半分で私の生活費をまかなったのだが、どうにかやってゆけた。


ひと月8フランの私の住居は暖房設備のないあわれな屋根部屋であり、冬はそこで霜にふるえ、夏はこげつくような暑さに耐えなければならなかった。私の朝食はロッケンメールブライであり、昼食は決して16ペンニヒをこえることはなかった。しかしこの貧困と、懸命に働けばこの貧困から解放されるという確実な見通しとが、私をば何ものよりも学習へと追い立てたのであった。


そのうえ私はミナに値することを示そうとの願望を抱いていたが、これは私に不屈の勇気をさまし育てた。そこで私は異常な熱心をもって英語の学習に専念したが、このときの緊急切迫した境遇から、私はあらゆる言語の習得を容易にする一方法を発見した。


このかんたんな方法とはまずつぎのことにある。非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日1時間をあてること、つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦することである。


私の記憶力は少年時代からほとんど暗誦しなかったから、弱かったけれども、私はあらゆる瞬間も勉学のために利用した。まったく時を盗んだのである。できるだけ早く会話をものにするために、日曜日には英国教会の礼拝にいつも2回はかよって、説教を傾聴し、その1語1語を低く口まねした。


どのような使い走りにも、雨が降ってももちろん、1冊の本を手に持って、それから何かを暗記した。何も読まずに郵便局で待っていたことはなかった。


こうして私はしだいに記憶力を強めて、3ヶ月後にははやくもわが教師テイラー氏とトンプソン氏の前で、いつもその授業時間には印刷された英語の散文20ページを、もしあらかじめ3回注意して通読していたらば、文字どおり暗誦することができた。


この方法によって私はゴールドスミスの「ウェイクフィールド牧師」の全部とウォルター・スコットの「アイヴォンホー」とを暗記した。


過度の興奮のため私はごくわずかしか眠れないので、夜中にさめてるすべての時間を利用して、夕方に読んだことをもう1度そらでくり返した。


記憶力は昼間より夜ははるかに集中するものであるから、私はこの夜中にくり返すことは最も効果があることを知った。


私はこのような方法をなんびとにも推薦する。このようにして私は半年間に英語の基礎的知識をわがものにすることができた。


あなたにすべてのよきことが雪崩ごとく起きますように♪


今日の声に出したいコトバ


私は、断固として「詰め込みと丸暗記は勉強の王道である」と信じています。――荘司雅彦


感想


丸暗記と言うと何か悪いことのように聞こえますが、古代への情熱を読んでいると丸暗記こそ学習の基礎であると思うようになりました。


それにしても雨が降っても1冊の本を手に持って暗記したシュリーマンの情熱は凄まじいものがありますね。私も見習いたいと思います。


丸暗記をすれば理解はあとからついてくると思いって、「暗記が先、理解が後」をモットーにバンバン丸暗記をしていきます。


古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)