第30冊目  プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編)) (単行本) P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (著), 上田 惇生 (著)

誰でも、自らの強みについてよくわかっていると思っている。だか、だいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし何ごとかを成し遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行いことはできない。できないことによって何かを成し遂げることなど、といていできない。

私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からスタートしない。何に時間がとらわれているかをあきらかにすることからスタートする。次に、時間を管理すべく、自分の時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。そして最後に、その結果得られた時間を大きくまとめる。すなわち、時間を記録し、管理し、まとめるという3つの段階が、成果をあげるための時間管理の基本となる。

われわれは、どのように時間を過ごしたかを、記憶に頼って知ることは出来ない。

時間を管理するには、まず自らの時間をどのように使っているかを知らなければならない。

ときどき、自分が時間をどう使っているか記憶自慢の人にメモしてもらい、そのメモを何週間か何ヶ月かしまっておいてもらう。その間、実際に時間の記録をとらせる。彼らが思っていた時間の使い方と実際の記録は似ていたためしがない。

ある会社の会長は、時間を大きく3つに分けいていると自分では思っていた。3分の1は幹部との時間、あとの3分の1は大切な客との時間、残りの3分の1は地域活動のための時間だった。6週間にわたって記録をつけてもらったところ、これらの3つの活動のいずれに対しても、ほとんど時間をつかっていなかったことがわかった。それらは、割くべきであると考えられていた時間にすぎなかった。例によって都合のよい記憶なるものが、実際にそれらの仕事に時間を使っているように思い込ませていたのだった。たとえばこの人は、友人の顧客からの注文に早く応えるよう工場に促進の電話をすることに使っていた。しかも、注文はいつも円滑に処理されており、彼の干渉はむしろ注文を遅らせる原因になっていた。