第3898冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

 -陰口大好き部下

 

陰口は本人がいないところで、その人の悪口を言う行為を指す。もしリーダーである自分が陰口の対象になっていることがわかれば、心穏やかではない。不安になるし、復讐心に駆りたれられる場合もある。

 

ただし、リーダー職員はその思いに振り回されてはならない。復讐心は人の判断を誤らせる。よい結果をもたらすことはまずあり得ない。

 

そもそも陰口は本人がいないところで示されるものだ。よって、本人にそれが伝わってくる、「伝聞」である。例外は、その場面が録音、録画されたものを入手したケース、あるいは、隣の部屋で実際に漏れ聞いてしまったケースくらいだ。多くは、「伝聞」で、知り得たものである。

 

誰かが、あたかもその場を再現するような形で、「こんなこと言っていたよ」と耳打ちしたとしても、それがありのままの事実を語ったか、聞き手は判断できない。あくまでも、その人が見聞きしたものを思い出しながら描写しものに過ぎない。そこに、その人による解釈が入る。

 

やっかいなのは、伝聞で解釈された事柄は、事実よりもオーバーに表現されるケースが多い点。だから、陰口は耳に入ったとき、人は怒り心頭の状態になりやすい。陰口のこうした特性を理解し、あえて冷静に向き合う。一時的に気持ちが動揺し、怒りに燃えても、伝え聞いたことが事実とは限らない。あくまでも、把握が可能なのは、自分に対して、どうやらマイナスの言動があったようだ、ということろまでだ。

 

では、何もしないで黙って見過ごすのか。私はノー・リアクションをすすめるつもりはない。むしろ、積極的な行動に出ることをおすすめする。とはいえ、陰口に対するアクションではない。あくまで、その人に対するアクションを起こすという意味だ。

 

もし、これまで、陰口を言っている(と思われる)部下とのふれあい、コミュニケーションの機会が少ないようであれば、意識して増やすようにする。その際のポイントは、感謝とねぎらいとリスペクトだ。

 

会話のなかに、その職員を大切にしているという気持ちを、いいところを評価しているという思い、感謝やねぎらいの気持ちなどを、ふんだんに盛り込むようにする。「この前はありがとうございました」「この前は本当に助かりました」「この前は、こんな光景を見て本当に嬉しかったです」といったイメージの話を、意識して盛り込むようにする。

 

なぜか、感謝とねぎらいとリスペクトの気持ちが伝えられると、その人を影で攻撃するのは難しくなるからだ。何らかの理由でマイナスの感情や敵対心を抱く部分があったとしても、今、目の前にいるその人が、自分を認める姿勢を見せてくれると、攻撃モードは薄らいで、陰口攻撃を仕掛ける気力は失せやすくなる。