第3322冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 頼まれた人は不快に思うか


人は、できるだけ他人に頼まずに済まそうとする。理由はいくつかあるが、アメリカ人の場合その最大のものは、独立独歩の精神に反するからである。第二の理由は、断られたくないからだ。拒絶され自尊心を傷つけられるのがいやなのである。そして第三は、頼みが叶う可能性を自分の物差しで判断しているからである。たとえば絶対に断られると考えたら、一年に一度のランチやディナーをあえて頼む気にはなるまい。だが大方の人は、頼まれた相手がOKする確率を過小評価している。これは、頼みごとをする人は、相手がイエスと言うときのコストばかりを考えがちで、ノーと言うコストに注意を払っていないからである。相手が頼みを断るのは、「よき隣人であれ」という社会の暗黙の規範に背くことになる。読者自身が頼まれる側だったら、太っ腹で度量の広い人間だと思われたいだろうか、それともケチで了見の狭い人間だと思われてもいいだろうか。それに、面と向かって断るのは気まずいものだ。私たちは子供の頃から親に「人には親切にしなさい」と言われて育っているから、人から何か頼まれたり引き受けるのがなかば習い性となっている。さらに、頼みごとを引き受けてあげれば相手に貸しを作ることになるので、あなたの立場は強くなる。新入社員のメンター役になるにせよ、何かチャンスを与えるにせよ、恩を受けた相手は将来何かの形で、たとえば忠実な部下になるといった形でお返しをしようと考えるだろう。またそうした見返りがないとしても、誰かのために何かをしてあげられるのは、あなたにそれだけの力が備わっていることの証にほかならない。