第3229冊目 負けてたまるか! 若者のための仕事論  丹羽 宇一郎 (著)


負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

  • とくに目の動きだけは、誰もごまかせない


昔から、精神が顔をつくっているとよくいいます。しっかり勉強して精神を鍛えれば、いい顔になる。卑しいことをすると卑しい顔になる。また、顔の中でも、とりわけ目をよく見ることです。目の動きだけは誰もごまかせません。


私は写真を撮られることがあまり好きではないのですが、取材などでカメラを向けられることが多い。私の顔を取るだけで三〇枚近くシャッターを切るのです。私は一度、「さっきからパシャパシャ撮っているけど、俺の顔かたちは変わらないんだから、無駄だよ。さっさと終わらせてよ」とカメラマンに言ったことがあります。


ところがカメラマンというのは、私の姿を撮っているのではなく、目の動きを撮っているのです。目の輝きが増して、あっと思うときがある。こういうところをパシャと撮るわけです。これは三〇枚の中でも一枚か二枚しかない。


カメラを向けらると、たいていの人は緊張して顔がこわばったりするものですが、話しているうちに夢中になって、フッと肩の力が抜けるときがあります。そういうときは、自然な表情で目の輝きも増しているのです。これを撮っているというわけです。


したがって私はそれ以降、パシャパシャ撮られても怒らなくなりました。あんまり多くシャッターを切られると、「ああ、まずいな。俺の目の輝きが足りないんだな。今日は気力が欠けているんじゃないか」などと、かえって反省するようになりました。


先に私は、人は自分の心の鏡であると言いました。それは顔つき、とくに目に感情が表れて、相手をそれを敏感に察知するからです。嘘や好き嫌いといった気持ちばかりでなく、生き方そのものも表れてきます。これはもうごまかしようがないのです。だからこそ素の自分を磨き、ありのままで勝負するしかないのだと私は思っています。