第3139冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 口と表情が別々の言葉を話すとき


口からは心地よい言葉を発しながら、顔では口と正反対の不愉快なノンバーバルを伝えている場面が、どれほど多いことか。最近出席したパーティーでもそんな場面に出会った。そのパーティーには、子どもたちがいい仕事につけて本当によかったと話している客がいた。ところが、周囲の人たちが祝いの言葉をかける中、彼は嬉しそうとは言い難い笑みを浮かべ、顎の筋肉に力を入れて、それに応えていたのだ。後で彼の奥さんがそっと話してくれたところによると、実際には先のない、どうにもならない仕事で、食べていける見込みがないことに父親としてとても動揺していたのだという。その口と顔は、まったく別のことを語っていた。


人は感情を隠そうとすることが多いのを忘れてはならない。そのため、入念に観察しなければ、表情を見極めるのはさらに難しくなる。そのうえ顔に表れた手がかりはすぐに消えてしまうこともあるので、気付きにくい。普段のおしゃべりなら、そんなかすかな動作はそれほど意味がないかもしれないが、大切な対話(恋人、親子、仕事関係者の間や、就職の面接など)では、わずかに思える緊張感の表れも、大きな感情の対立を示していることがある。意識を操る脳は辺縁系の感情を覆い隠そうとするだろうから、表面に浮かび出たシグナルは、どんな小さなものでも捉える必要がある。そうしたシグナルは、心の奥底にある考えや意図を、より正確に描き出しているかもしれない。


喜びを表す表情は簡単に見分けられ、世界のどこでも理解されるが、さまざまな理由から抑えられたり隠されたりするので、気付きにくいことがある。たとえばポーカーをやっているときには、手に強いカードがあっても、喜ぶ表情を見えるわけにはいかない。同僚にくらべてボーナスの額が多いことも、同僚には知られなくないだろう。私たちは幸運を人に知られないほうがいいと思うと、幸せな気分や高ぶる気持ちをうまく隠すことができる。それでも、体に現れる不快な気持ちの手がかりと同じで、注意深く観察し、裏付けとなるほかのわずかな行動を見極めることによって、かすかで抑えられた快適のノンバーバルも読み取れるようになる。たとえば、顔の表情からうかがえる興奮はごくわずかなもので、熟練の観察者でも心から喜んでいるかどうかを判断するのは難しいかもしれない。ところが、足の表情がそのワクワク感を裏付ける証拠を追加してくれることがあり、快く感じているという確信が正しいとみなすのに役立つだろう。