第3122冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著),‎ マーヴィン カーリンズ (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 身づくろい


私たちは心身ともに元気なとき、見かけに気をつかい、適切に身づくろいをして、身なりを整えることができる。これは人間に限ったことではなく、鳥も、ほかの哺乳動物も、同じような行動をする。ところが心身のいずれかに変調をきたすと、胴体や肩の姿勢や全身の様子が、不調のシグナルを出すようになる。多くの不幸なホームレスは統合失調症に悩まされ、服装などほとんど気にしていない。汚れて垢じみた服を身につけ、入浴させて清潔な服を着させようとする人たちがいても、たいていは激しく抵抗する。精神的に鬱状態にたった人は、歩いていても立っていてもひどく前かがみにあり、大きな心労に押しつぶされているように見える。


病や悲しみのさなかにある人が身づくろいをしなくなる現象は、人類学者、ソーシャルワーカー、医療従事者によって、世界中で注目されてきた。心が悲しみにくれたり体が病んだりすると、一番に気にしなくなるのが身づくろいや見栄えだ。たとえば手術をして回復途中の患者は、乱れた髪と背中が丸見えの患者用上着も気にせず病院の廊下を歩き、周りからどう見えるかなど気にしていない。本当に気分が悪くなった人は家でゴロゴロし、ボサボサの髪でも構わなくなるだろう。重い病人や心に深い傷を負った人の脳では、大切に思うことが変わり、身づくろいは単にその中に入らないということだ。だから、前後関係を考えながら、全体的に衛生状態や身づくろいが行き届いているかどうかによって、その人の心身の健康状態を推測することができる。