第2936目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 具体的に描写する


煙草が原因となる年間の死亡者数を聞いて、3カ月後に正確な数字を覚えているだろうか。おそらく覚えていない。しかし、満席のボーイング747が1年間、毎日3機、墜落して全員が命を落とした場合と同じくらいの人数だと聞けば、そのイメージはしばらく心に残るだろう。(鮮烈なだけでなく、驚くほど正確なイメージでもある。アメリカでは年間約53万人が煙草が原因の疾患で死亡する。これはボーイング747が1年間に1325回――1日3機以上――墜落した死亡者に匹敵する)。


「百分は一見にしかず」は真実であり、正当な理由もある。イメージは感情と生理状態に大きな影響を与え、脳の機能に強く働きかける。脳の進化において、言語処理能力は視覚処理能力よりはるかに歴史が新しく、視覚処理ほど深く脳に刻み込まれていない。私たちが言葉をしゃべると、脳は言葉と概念と結びつけ、概念を画像に解釈して、ようやく実際に理解する。それなら最初から「脳の言語」で話せばいいではないか。可能なかぎり、絵や映像という言葉を使おう。言葉よりはるかに大きな影響を与えることができ、そのメッセージははるかに長く記憶に残るだろう。


ビジョンのあるカリスマは、視覚の力を最大限に利用する。アメリカの歴代大統領のなかで、フランクリン・ルーズベルトエイブラハム・リンカーンなどカリスマと評価されている大統領は、カリスマと評価されていない大統領に比べて、一般教書演説で視覚的な比喩を2倍多く使っている。