第2873冊目 人生を思い通りに変える51の質問 谷原 誠 (著)


人生を思い通りに変える51の質問

人生を思い通りに変える51の質問

  • 相手の期待を超えていますか?


私は、多くの交通事故被害者から依頼を受けて事件を処理してきました。たとえば、自分の最愛の子を交通事故で亡くした親は、自分も死ぬほど嘆き悲しむとともに、加害者を憎みます。死刑にしても足りないくらいの感情です。


他方、加害者の方はどうでしょうか。執行猶予ならまだしも、禁錮1年の判決などを受けると、「ほんのちょっとよそ見をして歩行者を見逃してしまっただけなのに、なぜ1年も刑務所に入らなければならないのか」と重すぎる判決だと感じていることがあります。人の死という重大な結果を自分が起こしてしまったとしても、そう考えてしまうのです。


つまり、人間は、どうなことでも「自分にできるだけ有利に」考えてしまうということです。私は、弁護士として、そのような人たちをとてもたくさん見てきました。


刑事事件に限りません。仕事を考えてみましょう。本来、会社が労働者に払う給料と労働は等価値のはずです。しかし、労働者は、「こんな安い給料で、なんでこんなに働かなければならないんだ」と不平を言い、会社の方は、「こんなに高い給料を払っているのだから、もっと働け」と不平を言います。どちらが正しいのでしょうか?


配偶者間でも同じでしょう。妻が夫に「もっと家事を手伝うべきだ」と不平を言うと、夫の方は「俺は仕事をしていて疲れているのだ。お前は家でゴロゴロしているのだから、家事くらいしろ」などと不平を言います。どちらが正しいのでしょうか?


多くの人は、自分の方が大変であり、自分の方が多くを与えているのに見返りが少ないと思っています。ですから、相手に対して何かお返しをしようとするとき、「見返りはこのくらいが適当だな」と思った場合、相手から見ると大変過小評価されている、と考えなければなりません。自分の評価より少し与えすぎたと思えるくらいでちょうど帳尻が合うくらいなのです。


これは仕事でも言えます。弁護士の場合、事件の依頼を受けて報酬をいただきます。その時、「このくらいの報酬なら、この程度の仕事だ」などと思ってやっていると、とても依頼者の期待に添うことができません。


そこで、私たちの事務所では、「more than expected」(相手の期待を上回れ)を事務所モットーとしています。常に依頼者の期待を上回るように全力で仕事と取り組むことにより、自分を律しようとする心構えです。