第2862冊目 人生を思い通りに変える51の質問 谷原 誠 (著)


人生を思い通りに変える51の質問

人生を思い通りに変える51の質問

  • 初心を忘れていませんか?


「初心を忘れからず」と言います。


格言になっているほどですから、いかに私たちが初心を忘れてしまっているか、ということです。私も弁護士を16年やってきましたが、初心を忘れてしまっていることに気づくことが多く、自分が恥ずかしくなってしまいます。


弁護士の場合、1年目はすべてが新しく、がむしゃらに勉強し、吸収しようとします。事件処理にも細心の注意を払います。しかし、弁護士を3年ほどやってみると、だいたいの事件をこなし、事件の処理感覚がつけめてきます。危険なのは、この時期です。弁護士業に慣れてしまって、少し飽きもできてきます。そのための注意力が散漫になってとんでもないミスを犯しがちになるのです。


私も弁護士になって3年が経過したころ、だんだんと事件処理に慣れてきて、「この事件は、たいたいこんな感じで解決するだろうな」という感覚で仕事を処理しようとしていました。


ところが、判例を調べさえすればすぐに勝てた事件を、怠惰と過信が原因で十分調査せず、裁判に長時間かかってしまったことがありました。私は長期間の裁判の終盤でようやく判例を調べてみて、こちらに有利な判例があることを初めて知ったのです。このとき、私は自分がとても愚かで惨めな気持ちになりました。また、依頼者に大変申し訳ないことをしてしまいました。自分がもっと注意深く、丹念に調べ尽くしていれば、もっと早く訴訟を終わらせることができたのです。


このとき、私は、「初心を忘るべからず」という言葉を胸に刻みました。本当はもっと早く胸に刻みつけておくべきだったのですが、失敗をして初めて思い知ったのです。