第2793冊目 人の印象は3メートルと30秒で決まる―自己演出で作るパーソナルブランド  江木 園貴 (著)


  • 最初の30秒のイメージが、その後の一生に影響する


では、第一印象とはいつからいつまでの印象のことを指すのでしょか。


人は、誰でも、「パーソナル・スペース」と呼ばれる相手との距離感を、無意識に備えています。


アメリカの文化人類学エドワード・ホールが見出した「社会生活の距離」という法則によれば、


3・6メートル以上離れると個人的な関係を作ることは困難な「公衆距離」
1・2メートルから3・6メートルの間は形式的・儀礼的な「社会距離」
45センチから1・2メートルが、親しい友人同士の「個体距離」
45センチ以内が恋人同士の「密着距離」

と定義されています。


人が視界に入るのはおよそ10メートルの距離からですが、印象として認識しはじめるのは、「社会距離」である約3メートルまで近づいた時点です。


相手は3メートル先の地点から顔や服装を見て、あなたの全体像をおぼろげに選別し、その後、挨拶や名刺交換のときの表情やしぐさ、それに伴う声のトーンや口調から、具体的なイメージを構築します。つまり、3メートルまで近づいた時点で、第一印象の形成は、始まっているのです。


言葉を交わさない時点からすでに相手の中で、あなたの第一印象の形成はスタートしているのですから、見た目をよく見せることは非常に重要です。


そして、お互いが名乗り、名刺交換が終わるまでの時間、ここまでであなたのビジュアルや声は露呈していますから、名刺交換が終わり、ひと段落するまでが第一印象の最重要部分と言えるでしょう。この、声を発してから、挨拶し終えるまでの時間がわずか30秒なのです。


もちろん、初対面の場面は、ビジネスの名刺交換の場に限りません。その他のシーンにおいても、「はじめまして」と挨拶を交わし、お互い簡単な自己紹介をするまでの時間が30秒と捉えてください。


30秒の間に、先で述べたあなたの視覚情報と聴覚情報がすでに開示されているのです。つまり、たった30秒であなたの第一印象の93パーセントが確定され、ハロー効果により、それがあなたの基本像として一生続くのですから、絶対におろそかにはできない大事な30秒間です。


ですから、この30秒間を、「自分を売り込む最大のチャンスだ」と意識してください。ビジュアルを効果的に演出しなければ第一印象にとって損なのです。


具体的な演出法は後の章で述べますが、初めて会う相手には、今の自分よりワンランク上の自分を演出することを私は提唱しています。その関係が仕事上の取引であれ、社内の上下関係であれ、装いや振る舞いをワンランク上に演出することで、その印象に近づくための人間関係や環境を作ることができるからです。


別の言い方をすれば、「ふだんの自分より演出された装い」を心がけることで自己意識も向上するということです。


それは、靴をきれいに磨く、爪をきちんと整える、いつもより姿勢を正す、プレゼンテーション用に勝負ネクタイを購入したり、名刺入れを上質な革製のものに替えてみる、など些細のことでよいのです。些細な丁寧さを自然に装えるようになれば、自己暗示効果も絶大で、必ずあなたの内面や能力も追いついてきます。


私が、「第一印象の演出が一生に影響する」と断言する理由は、演出の効果が相手の印象に残るからだけではなく、演出自体が自己意識を高めるための行為であるとも言えるからなのです。