第2689冊目 人生を思い通りに変える51の質問  谷原 誠 (著)


人生を思い通りに変える51の質問

人生を思い通りに変える51の質問

  • 小さなことをチャンスに変えるには?


光陰矢のごとしと言いますが、年をとるごとに、1年が早く感じられます。日々色々なことが起こってきますが、大抵は、何事もなく過ぎ去っていきます。


ただ、日常起こっている些細なことも、自分のとらえ方次第で、何もなく過ぎ去ってゆくこともあれば、チャンスにもなりえます。チャンスが「私がチャンスですよ」という顔をしてやってくることなんてほとんどありません。むしろピンチだったり、面倒なことだったり、トラブルだったりすることも多いものです。その時、自分がそれをつかみ取るのか、無視して回避するのか、それも自分次第です。


私は、25歳で弁護士になりましたが、1年くらいたったとき、友人の紹介で、ある雑誌の小さな法律記事の連載を書く仕事が来ました。私は当時事務所から与えられた仕事をこなすのが精一杯でしたが、友人の紹介でもあったので、引き受けることにしました。するとしばらくして、その記事を読んだ人から「手形小切手の本を書かないか」という依頼がきました。弁護士で一般向けの本を書く人はそれほど多くなかったんで、たまたま私に白羽の屋が立ったののでしょうが、私は手形小切手の専門家ではありませんし、だいいち仕事が忙しく事務所に寝袋を持ち込んで泊まり込みで仕事をしていたほどです。


本を1冊書き上げるなど、どれだけ膨大な時間がかかるかわからないし、とても無理だと怖じ気づきました。


しかし、私は改めて考えてみました。本を1冊書くと、専門家として信用ができます。ある程度のブランディングになるのです。当時私が悩んでいたことの一つは、私がまだ20代半ばの若造であり、依頼者の信頼を勝ち得ないことでした。なにせ依頼者と言えば、必ず私よりも年上で中小企業の社長など海千山千の人たちです。「なんだ。この若造が」という態度がありありと見えていたのです。


そこで、私は、「仕事は、今以上に大変なことになるが、これは現状を打破する1つのチャンスかもしれない」と考え、本の執筆依頼を受けることにしたのです。ここで無理をしてでも「自分の書籍を出版する」という経験をしたことは大きかったと思います。


ここで私は自分のブランディングのために出版したのですが、これを一歩進め、私は、当時私が取り組んでいた「交渉・説得」についての本を書くことを思い立ち、出版社に企画を持ち込んだのです。「法律だけでなく、交渉にも強い弁護士」というブランドを確立したいがためです。


その後も私は、交渉に関する本を書き続け、その結果、私のところにはビジネス雑誌の特集などの取材が舞い込むことになり、さらにそれが出版社の目にとまり、出版の依頼が舞い込む、という循環が形成されるようになりました。


もし、私があのときはじめの雑誌記事の依頼を断っていたら、あるいは本の執筆を大変だからという理由で断っていたら、これほど本を書いてくることはなかったでしょう。


私は、自分が大変だからということを横に置いておいて、「このことを自分にとってのチャンスに変えるには、どうしたらよいだろうか?」と自分に質問をしました。そして、実際に、それはチャンスに変わったのです。