第2669冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 問題ではなく解決策を説明する


よいフィードバックとは、問題ではなく、すぐに行動に移せる具体的な解決策を説明するものだ。スタッフとのやりとりに関して、あるマネジャーを指導しているとしよう。「そんなにイライラしないで」と助言しても、別の選択肢を示さなければあまり役に立たない。私たちは生徒相手によくそうしてしまう。「ふざけるのはやめなさい!」といった注意を、「席について宿題を出しなさい」のように、やるべきことを伝える言い方に変えたら、どれほど効果的か考えてみてほしい。


ルール25で同僚のオートバイの教習体験を紹介した。ロブがそこに通っていると言ったとき、私たちはそんなことをしても無駄だと思った。蛍光灯のついた狭い部屋で受ける、平凡で退屈そのもののドライバー教習のようなイメージを抱いていたからだ。しかし、実際にはまったく逆で、私たちのワークショップのためにもロブが何度かメールを送ってきたほどだった。


訓練を受ける立ち場からずいぶん遠ざかっていたから、それがどれほど役立つとうことに改めて驚かされた。自分でもうまくできていないと感じたことが何度かあって、何が悪いのかわからなかったが、具体的ですばやいフィードバックがすべてを変えた。「角を曲がるときに頭を上げる」といった単純なフィードバックでさえ、次にそのとおりにやってみると完璧にうまくいく。


初めはコーンひとつまわるのもひと苦労だったとロブは説明した。ポイントは視線だと教官に言われた。コーンに近づくときにはコーンを一瞬見なければならないが、その後は視線を進行方向に固定する。コーンを見おろすと、当然ながら体がオートバイをそちらに進ませてしまう。しかし教官は、ロブがフィードバックを使ってうまくできるまで、理由を説明せずに、やるべきことだけを伝えた。くり返そう――「やるべきことだけを伝えた」のだ。近づくときにコーンを一瞬見せて、あとは前方に視線を固定する。


訓練やスポーツ、または学校での経験を思い出してもらいたい。やるべきことを指導者が伝えたいことが何回かあっただろうか。「力まかせに打つな」、「ポジションから離れるな」、「会合で軽はずみなことを言うな」など、「やるべきでない」ことは伝えたかもしれない。これらは次のように言い換えることができる。「力まかせに打つな」は、「ぶれずに均等な力でスイングしろ」や「クラブフェイスをボールの上に落とすことを想像して」に。「ポジションから離れるな」は、「マークしている選手とゴールのあいだに立て」に。「会合で軽はずみなことを言うな」は、「どこの国から来たか告げられたら、「おいでいただいて光栄です」と答えなさい」に言い換えられる。


「解決策」は、やるべきことを伝えるだけでなく、「あいまいな指示」を越えるものでなければならない。ここで「あいまいな指示」とは、参加者にやるべきことは伝えているが、あいまいすぎるか一般的すぎて役に立たないフィードバックを指す。


実践練習中や、中断できる時間がかぎられている場合には、フィードバックは短くしなければ成功しない。救命救急チームと手術前の手順を急いで確認しているときや、「椿姫」のリハーサルをしているときには、「ライトを調節して切開部を直接照らして」や「ダンサーの左側に立って」といった長めのフィードバックを与える時間はない。しかし、コーチングの初期にすでに長めの説明をしているのであれば、「決まり文句」――長いフィードバックの簡略版――で代用することができる。本番の最中でも、次の例のような短い「決まり文句」であれば投げられる。