第2641冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・イェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 最大の価値を生む20パーセントに集中して取り組む


さまざまな事象に対して経済学者がよく引き合いに出す「80対20の法則」(「パレートの法則」とも言う)は、「80パーセントの結果は20パーセントの原因から生まれる」という、くり返し見られるパターンだ。会社の帳簿を調べれば、利益の80パーセントが20パーセントの顧客から生まれているのがわかる。そうした価値の高い顧客を見るけ出すときには、全データベースの20パーセントに、役立つ情報の80パーセントが含まれている。残りの情報を集めようと多額のコストをかけても、さほど成果はあがらない。


80対20の法則は「練習」にも当てはまる。すばらしい成果をあげたいなら、最大の価値を生む20パーセントに集中して取り組むべきだ。残りの80パーセントにもっともらしく時間をかけるのをやめ、脇目もふらずその20パーセントを――80パーセントの時間をかけて、と言ってもいい
――練習すればたとえば(あるいは文字どおり)5つのプレーがほかのどこよりもうまく、わかっていても誰にも止められないようなアメフトのチームができる。もっとも重要な要素の練習に時間をかけることで、さらにすぐれた結果を出すことができるのだ。


練習に関して私たちが得た、もっとも意外で価値ある考え方のひとつに、練習の価値はむしろスキルを習得したあとで高まる、ということがある。多くの人は、練習の参加者が上達すると、「よし、やり方はわかったな。次に移ろう」と言う。しかし、80パーセントの結果を生み出す20パーセントの重要なスキルを練習しているなら、「やり方はわかった」ところでやめてはいけない。20パーセントのスキルの目標は、たんに習得するだけではなく、きわめてうまくなることだ。自然に、流れるようにできて、さらには(後述するように)創造性を発揮できるようになるまで練習しつづける。もっとも重要なことで抜きん出るのは、たんにあると便利なほかの多くのことを習得するよりはるかに大事なのだ。


サッカーの世界最高のミットフィールーダーのひとりであるシャビ・エルナンデス(スペイン代表)が、イギリスのガーディアン紙のインタビューでその点を指摘している。シャビは、スペインサッカーを特徴づける、ある練習の大切さを説明した。「ロンドがすべてだ」。正方形の外側で4、5人の選手がすばやくパスをまわし、ひとりかふたりがボールを追うゲームのことだ。「ロンド、ロンド、ロンド、1日も欠かさずに。とにかくいちばんいい練習だ。責任感とボールの保持を学ぶ。ボールを取られたら、まんなかに入る。パン、パン、パン。つねにワンタッチで」。あまりに効果的なので、選手は新しい練習を犠牲にしてもこればかりをくり返す。上達してもこの練習の価値は減らず、逆に高まる。スペインの選手たちがわざわざ呼び名をつけていることが、その重要性を物語っている。練習に呼び名をつけると、参加者がそれについて効率良く話せるというメリットもある。彼らのように世界の頂点をきわめ、競争で優位に立つために、とりわけ価値の高い練習をするときには、チャンスを逃さずこう言って、いっそうの成果をあげてほしい――「よし、やり方はわかったな。練習を続けて、もっとすばらしいものにしよう」。