第2627冊目 プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)


  • 価値観を優先する


自らをマネジメントするためには、強みや仕事の仕方とともに、自らの価値観を知っておかなければならない。


組織には価値観がある。そこに働く者にも価値観がある。組織において成果をあげるためには、働く者が組織の価値観になじまなければならない。同一である必要はない。だが、共存できなければならない。さもなければ、心楽しまず、成果もあがらない。


強みと仕事の仕方が合わないことはあまりない。両者は密接な関係にある。ところが、強みと価値観が合わないことは珍しくない。よくできること、特によくできること、恐ろしくよくできることが自らの価値観に合わない。世の中に貢献しているとの実感がわかず、人生のすべて、すりはその一部を割くに値しないと思われることがある。


私自身、成功していたことと、自らの価値観との違いに悩んだ。一九三〇年代の半ば、ロンドンの投資銀行で働き、順風満帆だった。強みを存分に発揮していた。しかし、金を扱っていたのでは、世の中に貢献している実感がなかった。私にとって価値あるものは、金ではなく人だった。自分が金持ちになることにも価値を見出せなかった。大恐慌のさんかあって、他の仕事の目当てがあるわけではなかった。だが、私は辞めた。正しい行動だった。


つまるところ、優先すべきは価値観である。


ところをうる


強み、仕事の仕方、価値観という三つの問題に答えが出さえすれば、得るべきところも明らかになるはずである。だたし、これは、働き始めたばかりでわかることではない。


しかし、やがて得るべきところが明らかになる。得るべきところではないところも明らかになる。大組織では成果をあげられないことが分かったならば、いかによい地位が約束されていても断らなければならない。


もちろん、自らの強み、仕事の仕方、価値観が分かっていれば、機会、職場、仕事について、私がやりましょう。私のやり方はこうです、仕事はこういうものにすべきです、他の組織や人との関係はこうなります。これこれの期間内にこれこれのことを仕上げます、と言えるようになります。


最高のキャリアは、あらかじめ計画して手にできるものではない。自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつかむよう用意をした者だけが手にできる。なぜならば、自らの得るべきところを知ることによって、普通の人、単に有能なだけの働き者が、卓越した仕事を行うようになるからである。