第2609冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 目をふさぐための、瞳孔の収縮と目を細める動作


研究によれば、人が驚愕反応を乗り越えた後、もし見えるものが好ましければ瞳孔が開き、不快なら瞳孔が閉じるという(ヘス、一九七五年a、一九七五年b)。瞳孔を意識的にコントロールすることはできないので、それは外部からの刺激(たとえば光線の変化)と内部からの刺激(思考など)の両方に対する、一瞬の間に起こる反応だ。瞳孔は小さくて見えにくく、特に黒い瞳ではよく見えないし、大きさの変化は急激なので、その変化は観察が難しい。これらの目の表情はとても役立つのに、人々は探すこともなく無視していることが多く、見かけたとしても、人の好き嫌いを見分ける上での価値を過小評価している。


私たちは、刺激を受けたとき、驚いたとき、突然何かに立ち向かうときには、目を大きく見開く――目の全体が大きくなるだけでなく、瞳孔も瞬時に開いて最大限の光を取り入れ、最大限の視覚情報を脳に送る。この驚愕反応は明らかに長い時を超えて役立ってきた。ところが、いったん情報を処理する時間ができ、否定的な情報(不快な驚きや実際の脅威)を確認すると、また一瞬にして瞳孔が閉じる(エクマン、二〇〇三年)。瞳孔を閉じることによって、目の前にあるものすべてにしっかり焦点を当て、身を守るか効果的に逃げられるよう、はっきり正確に見えるようにするためだ(ノルト、一九九九年)。これらはカメラの絞り(開口部)の働きと、とてもよく似ている。絞りが小さいほど焦点距離が伸びて、近くと遠くのすべてにピッタリ焦点が合う。緊急に老眼鏡が必要になり、手許になれば、紙に針穴を開けて目の前にかざえばいい。小さい穴のおかげで、読もうとしているものに焦点が合う。瞳孔を一番小さくしても不十分な場合、私たちは目を細めて開口部をできるだけ小さくしながら、同時に目を守ろうとする。