第2474冊目 その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』 矢野香 (著)


その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

  • 親しい人にも、年下にも「ため口」は御法度


皆さまの周りにも、親しい間柄になるにつれて、どんどん印象が軽くなる人はいませんか。初対面のときより二回目、短時間お会いしただけのときより数時間かけて食事を共にした後、仕事の話だけをしていたときより、プライベートの話までした後、なぜかその方のことを軽く感じてしまうのです。


その原因は「親しみ」と「軽さ」を混同しているからです。


親しみの気持ちとして行っている言動が、逆に軽さとして相手に伝わっている危険性があります。


番組制作の仕事は、毎回違う記者、カメラマンなどとチームを組むことがあります。そのため、何かの取材でご一緒したスタッフと、また別の取材で一緒になるということもよくあります。


数年ぶりの再会にも関わらず、「矢野ちゃ〜ん、久しぶり。相変わらずだねぇ〜」と声をかけてくる方がいます。「ちゃん」づけされるほど親しかったかしら、私たち。「相変わらず」と言われるほど、あなたは私の何を知っていたかしら……。


私たちは互いの人間関係の深さに合わせ、言葉づかいを変化させます。


出会って間もない頃は、互いに敬語で話していたものの、仲良くなってきた証として、言葉は敬語から丁寧語、丁寧語からときにはため口へと崩れてきます。


いつまでも敬語を使い続けていたのでは、相手は「私のことが嫌いなのかな。距離を置こうとしているのかな」と勘違いしかねません。そのため、親しくなった人とは言葉を崩して親近感を伝えようとするのです。


しかし、それが間違いのもと。軽くなる原因です。親しみ、共感を伝えようとして行っている言葉の崩れによって、信頼・尊敬も一緒に崩れていってしまう恐れがあります。


ため口とは、対等の話し方をすることです。つまり、エグゼクティブの皆さまが、ため口を使うということは、「自分はもっと下として、軽く扱ってもらっていい人間です」と表現してしまっていることになるのです。


会社で部下に軽く見られいている、なめられているような気がするという方は、ご自身の言動を思い返してみてください。部下との距離を縮めよう、共感を伝えようとして言葉を崩していませんか。


「同意の場面」は要注意です。会議で出た部下の提案に対して、褒めるつもりで、「それいいね〜」とため口で言っていませんか。


「そう思うんだよね」「して欲しいんだけど」と語尾に「ん」を使っていませんか。


部下をきちんと名前で呼んでいますか。あだ名で呼んでいませんか。


部下の失敗に対する指導など、言いにくいことを発言しなければならないとき。自分の中で言い出すタイイング、リズムをつくるために、決めゼリフをつくっていませんか。例えば「××ちゃん、ちょっといいかな〜」「君の気持ちはわかるんだけどさぁ」などです。変に相手の位置に降りて媚びているため口です。


エグゼクティブの皆さまは、相手と一緒の位置に降りる必要はないのです。


相手より経験や能力が少し上だから、管理・指導ができるのです。相手より人間的に熟しているから説教ができるのです。上からの立場のまま、言葉を崩さない発言をして信頼を勝ち取ってください。自分が降りるのではなく、相手を自分の高さまで引き上げてあげるのです。


それならば、年齢が同じ、立場も同じで、本当に対等な立場であるならば、ため口でいもいいのではないか、とおっしゃるかもしれません。


いいえ、違います。エグゼクティブの皆さまは、たとえ対等な立場であっても、ため口を使ってはいけません。それが正統派の品格です。