第2403冊目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 出る杭になれ


マーケティングの権威としていまや講演でも引っ張りだこのキース・フェラッジがハーバード・ビジネススクールを卒業したのは、一九九二年のことである。このときフェラッジは、マッキンゼーデトロイトコンサルティングから内定をもらっていた。当時デトロイトの代表だったパット・ロコントは、フェラッジの大胆な行動をいまでもよく覚えている。フェラッジは会社のトップに会いたいと言い張り、ロコントがニューヨーク市内のイタリアン・レストランで会食したいという。「食後のコーヒーを頼んでから、キースはこう言ったんだ。御社に入社するが、一つ条件がある、ってね。それは、年一回このレストランで一緒にディナーを食べること、というものだった。私は約束したよ。で、彼はウチに来た。みごとな作戦じゃないか。トップとのホットラインを確保したんだからね」


とは言え、これから雇われようという会社の社長に会わせろと要求するなど、なまかな人でもできまい。まして年一回の会食を入社の条件にするとは、驚くばかりの剛胆さである。たいていの人は、断られたらどうしようと尻込みする。あるいは、傲慢だとか厚かましいと思われるのではないか、目立ちたがりだとバカにされるのではないか、と考えて躊躇する。それに、採用面接でそんなことを言い出す人はめったにいないのだから、常識外れと呆れられる恐れもあるだろう。第3章では、組織で成功するにはスタート地点が大切であり、部門の勢力や位置づけに注目する必要があると指摘した。本章ではさらに一方踏み込んで、自分のやりたいことを引き寄せるにはどうしたらいいかを考えていく。フェラッジのエピソードや本章で取り上げるケースからもわかるように、キャリアをスタート(または再スタート)させるときには、やりたいことを臆せずに要求する意志と、自分を「その他大勢」から際立たせる演出力がモノを言う。たいていの人は自分の希望をはっきり口にすることをたららうし、目立ちすぎることを避けようとする。周囲に不快感を与えたり、野心家だと思われたりいしたくないからだろう。だが、万人に好かれようとすることが望ましいとか、好かれる人ほど出世するといった考えは、この際きっぱり捨てるべきである。大事なのは、自分を前面に押し出すことだ。さもないと、誰もあなたに気づきもしないだろう。