第2291目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫) 三枝理枝子 (著)


(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

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  • お辞儀一つであなたの人となりがわかってしまう


「自分を深く耕すほど、お辞儀が見事です」という言葉を聞いたことがあります。その人の人間性がお辞儀として表れていたのでしょう。


相手が誰であっても、どのような場面であっても、人が見とれてしまうようなお辞儀をしている人がいます。そういう人を見ると、思わず「この人はただ者ではない!」と感じます。


お辞儀一つで相手の懐に入ることができるのです。


あなたは日ごろ、自分のお辞儀を意識しているでしょうか。


自分のお辞儀を横から鏡に映して見たことがありますか。


頭をペコペコ何度も下げてお辞儀をしている人をたまに見かけますが、決して見栄えのいいものではありません。お辞儀をするのであれば、何度もペコペコ繰り返すのは安っぽく見えます。一回だけにしましょう。


ただし、その一回に精一杯の心を込めてください。首も背中も曲げて、お辞儀をすればそれで丁寧だと思っている人が多いですが、心がこもっていなければどんなに深く頭を下げても、相手にも響かないものです。


これは、グルメな友人から紹介されたイタリアンフレンチのお店に行ったときのことです。


味や雰囲気にこだわりを持つ友人が久しぶりに薦めてくれたお店だったので、かなり期待して行きました。すると評判通り、雰囲気も最高ランク、料理の味もワインの品ぞろえも、そして何より接客の素晴らしいお店でした。



ランチタイムが終了する間際に行ったのですが、店内はほぼ満席の状態でした。


スタッフは忙しいにもかからわず、お客様とさり気ない会話をしながらイキイキと楽しそうに働いています。スタッフの気づかいが素晴らしく、プロ意識がにじみ出ている姿は気持ちのいいものでした。


そのなかでもとくに目を奪われたのがスタッフ全員のお辞儀です。


オーダーを取るときも、料理を運ぶときも、食べ終えたお皿を下げるときも、まずは立ち止まり、会釈をしているのです。ペコペコしているのではなく、凜としていて、かつ丁寧で、その姿は美しいの一言でした。

レジで会計を待っているとき、厨房からシェフが出てきて「本日はありがとうございます。○○のお味はいかがでしたでしょうか」と尋ねられました。


驚いたことに満席状態のなか、私たちが食べたものを把握してくれていたのです。もちろん、味だけでなくて、盛り付けのセンスが素晴らしく、目でも楽しめたことをお伝えしました。


会計を済ませると、シェフも手の空いているスタッフも出口付近に集まり、そろって「ありがとうござい。またのお越しをお待ちしております」と、見送りをしてくれました。そのときの深々とした心のこもったお辞儀に魅せられてしまいました。


言葉で伝えるだけでなく、心のこもったお辞儀が伴うと、相手の心に強烈に残るになることを実感しました。


相手の心に残るお辞儀をするために守ってほしいポイントが三つあります。


まずは、相手の目を見ることです。お辞儀の始めと終わりに相手の目をしっかり見ましょう。


次に、背中をまっすぐに見ることです。体を前に倒すとき、首だけをペコッと曲げてお辞儀をするのではなく、後頭部、首、背中を一直線にして一枚の板を背負っているイメージです。


そして最後は、ゆっくり静かに行うことです。とくに、前に倒すときよりも体を元に戻すときに時間をかけてください。だいたい前に倒れる二倍の時間をかけて起き上がると美しく見えます。


これらは決して難しいことではありません。無意識にできるようになるまで練習して、体に覚え込ませておくと、後々きっとあなたを助けてくれることでしょう。


日ごろ、お辞儀を軽く考えていないでしょうか。


感動的な多くの言葉を並べても、いい加減な軽いお辞儀をしているようでは、相手の心を動かすことはできません。


たとえ無言であっても、心に込めた、丁寧なお辞儀は相手の心に届き、いつまでも心に残るものです。


お辞儀一つであなたの人となりが相手にはわかってしまうのです。