第2273目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・イェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール


認知科学者のダニエル・ウィリンガムは、著書「Why Don't Students Like School?」のなかで、解けと言われた問題がさほど深刻ではなく、やりがいがあり、少しずつ着実に前進できる場合に、学習はもっとも速く進むと述べている。問題のレベルを上げすぎると学習は遅くなる。さらにウィリンガムによると、問題をゆっくりと段階的にむずかしくしていくと、人はそれを解くのが好きになる。うまく学習していることがわかってうくれしくなるのだ。しかし、逆に言えば、失敗のダメージが大きくなりうるということでもある。失敗すると落胆し、あきらめてしまうかもしれない。何度もまちがえて、なおも前進するには、非常に大きな意志の力が必要だ。ルーおじさんが99回がんばって、うまくいかなかったことを鮮明に覚えているのは、おそらく人生でそれほど苦悩したのがそのときだけだったからだろう。


最後に大事なことをひとつ。練習のあいだに参加者は何より成功を体験すべきだが、理想の成功率は100パーセントではない。もし100パーセントなら、その練習はやさしすぎる。たいていの参加者が、たいていの場合うまくやれる程度の成功率が最適だ。まちがいがかなり発生する練習を始めた場合には、参加者が成功しだすまでやめてはいけない。それでもまちがいが減らなければ、そのまま続ける必要があるのかどうか自問してみる。プロセスを設計し直して、複雑さか変動要素を取り除き、タスクを一時的に単純化してもいいだろう。一連のスキルを分解して、ひとつだけに集中できるようにするか、とりあえず全体の流れをゆっくりにして、複雑なことも処理できる時間を与え、あとでペースを速める。


大まかに言うと、練習の目標は、正しいやり方で可能なかぎり速くできるようにすることだ。正しくできないときには速度を落としてやり直す。すると当然ながら、参加者はきわめて複雑なタスクを正しく処理しながら、100パーセントではないにしろ、一貫して成功を収められるようになる。正しくできないときには、習熟が見えるところまで複雑さを取り除いて、そこから少しずつ段階を上げていく。