第2266目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則

  • 勝者のようにふるまう


ソフトウェア会社のCEOとして成功を収めていたスティーブは、ある外資ベンチャーキャピタルのパートナーに転身した。ところがこの会社の投資実績は芳しくないうえ、スティーブは他のパートナーともどうも気が合わない。そこでさっさと見切りをつけ、結局また小さなソフトウェア会社のCEOになった。ちょうどその頃スティーブと話す機会があったが、彼は意気軒昂だった。新しい会社は小さくな危なっかしいにもかからわず、スティーブと話していると全然そんな感じがしない。じつは情熱的に現状を語り、見通しは明るいと断言し、ベンチャーキャピタルでの失敗などおくびにも出さなかった。そのスティーブは、いまでは国際的なコンサルティング会社の執行副社長に収まっている。彼の成功は、つねに自信満々で成功者のようにふるまってきたことと無縁ではないだろう。


考えてみれば、状況というものは解釈次第、見方次第であることが多い。あなたは自ら辞めたのだろうか、それともクビになったのだろうか。あなたは前職で有能だったのだろうか、そうではなかったのだろうか。他の人があなたをどう見るかは、あなた自身の態度や行動にかなり左右される。あなたは明るくて前向きで堂々としていたら、誰も失敗してクビになったとは思わないだろう。第7章でも上げたように、内心では不安でも自信があるようにふるまう術を身につけることは、とても大切である。そのようにふるまえば、たとえ内情はどうであれ、あなたが万事を掌握しているという印象を与えることができる。


なぜそんなことが大切かと言えば、人間は勝ち組につきたがるものだからである。苦境に立たされ助けがほしいときには、最後に勝つのは自分だと周囲に信じさせることが必要がある。


ソネンフェルドにとって、アトランタにいながらエモリー大学相手に訴訟を起こすのは非常にむずかしい選択だった。なにしろ市内の法律事務所も、それどころか判事でさえ、大学と何らかの結びつきがある土地柄なのである。また、同じ市内でリーダーシップ研究所を設立し資金を調達するのも、きわめて困難だった。それでもソネンフェルドは、自分は罠にはめられたと確信していたし、教育者や研究者としての自分の能力に自信もあったから、けっして後には引かなかった。最後は必ず勝つというゆるぎない姿勢を貫き通したのである。設立資金を集めることができたのは、まさにそのおかげだった。失敗しそうな企てにわざわざお金を出す人はいない。この意味で、勝者のようにふるまうことは自己実現的な行為だと言える。