第2247目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則

  • 集中2


メリンダも、二〇〇二年からずっと同じクレジットカード会社で働いている。長くいれば社内の事情に精通し、よい人間関係を築くことができるので、賢く影響力を行使できるとメリンダは話す。最近では転職によるキャリアアップということがしきりに言われるが、生え抜きの社員の方が影響力を獲得しやすいことはまちがないない。S&P五〇〇社のCEOの経歴を調べたところ、その会社での勤続年数は平均一五年におよんだという調査報告もある。


ある一つの職務やスキルに的を絞って全力投球するというやり方もある。多くの調査が示すように、天才と呼ばれる人でさえ、卓越した業績を残すには膨大な準備期間を必要とする。その膨大な時間を確保するためには、一つのスキルに狙いを定めて熟達をめざす方が効果的である。


さらに、自分のポストや職務の中で最も重要なもの、すなわち目標達成に欠かせない業務に集中するという方法も考えられる。ここに力を集中的に投じれば、目標達成すると同時に、あなたの能力を周囲に印象づけることが可能だ。バークレーズ銀行で若手ながら役員に抜擢されたバーノンは、ここぞという場面で実力を発揮することで注目を集めてきた。経営幹部向けのプレゼンテーションや重要なITプロジェクトで、バーノンのチームは水際だった手腕を示す。チームに割り当て割れた仕事のうち最も効果の高い五〜一〇%に集中することで、予算や人員を効率よく配分し、時間を有効活用できるという。


ところが、こうした集中効果を活かしている人は驚くほど少ない。一つの会社で仕事人生を全うしようという人はいまや希少種に近いし、あるスキルに熟達しようと一心不乱に打ち込む求道者タイプもあまり見かけない。有能な人ほど多くのことに興味を持ち、またあちこちから誘いも多いものだから、なかなか一つのことに絞り込めないのだろう。また、いろいろ経験しておけば「はずれ」を引いてしまったときの保険になるという考え方もある。たしかにそうかもしれない。だが一点に集中すれば火を噴く太陽光線のように、業種やスキルを絞り込んで一点集中型でエネルギーを投じる方がより効果的であることは、さまざまな調査結果が示してる。