第2240目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

  • 感じかたは伝染する


何年か前、我が家の近所に新しい銀行が開店した。最初のうちは手入れが行き届き、子ざっぱりして見えた。ところが二年ほそたつと、植木屋を雇っていないのは一目瞭然になり、窓の掃除も定期的に行われなくなった。だんだん前に駐車している車が減っていき、金曜日(給料日)でさえ止まっている車は少なくなった。そしてとうとう閉店してしまった。競争相手になる銀行は一番近くて五マイルも離れいているのだから、場所的には申し分なかったはずだ。しかし、感情が伝染していくように、人の感じかたもまた伝染する。ほかの人たちが不快に思って足しげく通わなくなったと感じれば、自分もそこには行かなくなる。その銀行は何か別の理由で閉店したにちがいないが、このことだけは言える。外見によって新しい取引先を惹きつけることができなかった――魅力的な場所ではなかったのだ。


ガソリンスタンドも、どこでも同じ商品を売っているという点で、銀行によく似ている。賢いスタンド経営者は、照明が明るいスタンドほどドライバーはガソリンを入れたいと感じることを、経験から学んできた。隣り合ってふたつのガソリンスタンドがあり、一方は照明が明るくて手入れが行き届き、もう一方は照明が暗くて手入れが悪いとき、たとえガソリンの値段が少しだけ、一セントか二セント高かったとしても、みんな明るくてよく手入れされたスタンドのほうに入っていく。なぜだろうか? 安全だと感じるからだ。物質がエネルギーに等しいように、安全は快適さに等しい。


この快適/安全の方程式は、ぎゅうぎゅう詰めで身動きの取れないエレベーターや切り立った崖の縁から、靴の中にサソリを見つけたときまで、あらゆる状況で通じる。私が以前に働いていた大学では、キャンパスにある駐車場を利用する人が少ない理由を、学生たちに尋ねてみるまでもなかった。尋ねられたときの答えは実に簡単なものだ――街灯が足りないから。学生たちは照明の暗い駐車場より、街灯で明るく照らされた路上に駐車するほうを好んでいた。照明は単なる快適さだけの問題ではない。照明は防犯にも大きく役立つため、適切な照明を怠ったとして訴えられた企業は多い。


安全は売り物になる。人は安全だと思うと快適に感じるからだ――自動車業界は車にエアバッグを装着したとき、それに気付いている。安全の話になるとエアバッグは一個では足りないらしく、私の車には六個もある。十分な安全装置ほど、特子どもを乗せているとき、快適さを感じさせてくれるものはほかにないから、人々はかなり高い金額を支払うこともいとわない。