第2117冊目 心を上手に透視する方法 トルステン・ハーフェナー (著), 福原美穂子 (翻訳)


心を上手に透視する方法

心を上手に透視する方法

  • 手を開いているなら「友好的」、閉じているなら「懐疑的」


手の動きには二つの種類がある。手を開く動作と、閉じる動作だ。


手を開いている場合、相手に手のひらが見える。これは誠実さのサインで、何も隠し事をしていないということだ。さらに友好的に誘いかける動作でもあり、信頼をもたらすものだ。何かを与えたり、手に取ったりするときは手のひらを開く。これは、「私はフェアな交換をする気持ちがある」ということを象徴している。


こぶしを握っていると、手のひらが隠れる。相手には手の甲しか見えない。この動作は、何かを控えておきたいという意味だ。不安や自信のなさからくることもあれば、何か隠しておきたいことがある場合もある。どちらにしろ、相手と距離を置いている。


手を広げていても、テーブルの上や椅子のひじ掛けなどに手のひらを向けてのせていたら同じこと。テーブルの下に手が隠れていたら、なおのことだ。


手のひらを上に向けて両手を上げる動作は、相手を起こすことを象徴する。「どうぞお立ちください」という典型的な動作でもある。手のひらを下に向けて、手を下に動かす動作は何かを促すサインであり、「どうぞお座りください」という指示を出すときにすることが多い。


手の甲を上にして手を下ろす動作を片手だけで行うと、まったく違う意味になることがある。両手ならば丁寧な「どうぞお座りください」の意味にとれるのに、片手なら「さあ、座れ」というぞんざいな命令になるかもしれない。


手の甲を上に向けて手を下ろす動作は、いつでも優位を表している。相手を低く押さえて小さくしようとする象徴だ。聴衆に対してこの動作をして「お静かに!」と制する政治家の演説を思い出してほしい。これは控えめに静粛を求めるサインであるだけでなく、あきらかに、自分に優位があることを意味する行動でもあるのだ。


同じ行動でも、やり方を少し変えると、優位に立つ挨拶から、友好的な挨拶に変わる。つまり、肩を叩くときに上から下に手を動かすのではなく、手を広げて横から叩くと友好的になる。ほとんど同じ動作のように見えても、まったく違う効果があるのだ。もちろん、こんな些細な違いは意識の上らないことが多いが、無意識ではすぐに気づいているものだ。


ほとんど無意識に行っている動作の一つに、指で何かをトントンと叩くという動作がある。議論しているときに相手がテーブルの上や椅子のひじ掛けをトントン叩いたら、相手がこの会話を終わらせたいと思っていることを示している。理由はいろいろある。ストレス、フラストレーション、この場を去りたいという願望、あるいは用事があるなどだ。そうするとあなたが何を話しても、相手はあまり熱心に聞いていないだろう。それを察知さえできれば、どんな対応をとればよいか考えられるだろう。
ほかにも例がある。挨拶するとき、相手が左手であなたの肩をトントンと叩いたとする。これは、「俺のほうが強いんだぞ」というサインだ。上司に向かってこんな挨拶をする人はいないだろう。逆に、上司がこの挨拶をしても、悪い意味にとる人はいない。つまり、その人の社会的地位が、行動を決めているのだ。