第2124冊目 CAの私がVIPのお客様に教わった話し方のエッセンス 高橋 くるみ (著


CAの私がVIPのお客様に教わった話し方のエッセンス

CAの私がVIPのお客様に教わった話し方のエッセンス

  • 見え見えのお世辞は案外見抜かれない


初めてお会いするお客様に何かを薦めたり売ったりする場合や、相手がとてつもなく経験豊富で共通点も見当たらないというような、相手のほうが圧倒的に立場が強い状況というのは、みなさんの職場でもよくあるのではないでしょうか。


相手のこともよくわからないし、下手にアプローチすると引かれそうで、誰にとってもとてもやりにくい相手といえますよね。


観察期間のないこのパターンで、相手といい関係を築くツールが「お世辞」です。特に女性には効果的です。


お世辞はうまくいけば相手に自分の存在感を強く残せますが、下手にすると怒らせることにもつながる諸刃の刃です。うまく言える人は、組織において何からし得をする場合も多いですし、応援してくれる仲間を増やせるので結果として大きくリターンもあります。人を褒めることなので、自分も気持ちよくいられますしね。

  • 初対面が勝負のパイロットのテクニック


お世辞といえばモテ男に聞け! いわゆる合コンなどは初対面の連続ですから、ここで圧倒的に強く、ググッと女性の心に入り込めるのはモテ男の領分です。私はそのワザを目撃したことがあります。


大手エアラインですとCAは数千人在籍していますので、初めて会う仲間とチームを組んで仕事をする機会はかなり多いです。その便にも、素敵な先輩女性CAが乗務していました。


CAには、めちゃめちゃきれい! と社内でも振り返りたくなる人が1割くらいいるのですが(1割だけです。くるみ総研のリサーチの範囲で根拠なし)、まさしくそれに該当する方でした。


そんな女性をモテ男が放っておくはずもありません。同じ便に乗っても操縦席に入ってしまえばほとんどやりとりはないので、パイロットも初対面が勝負というわけです。


さて、モテ男パイロットが口を開きます。


「Kさん、今日はよろしくね。さっきから思っていたんですけど、すっごく米倉涼子さんに似ていますね。なんでこんなところにいるわけ? もったいないな。いる場所間違ったよね、本当はテレビに出ている人なのにね。すごくタイプでドキドキするな」


美人CAは返します。


「またまた、Sさん(モテ男)っていつもそんな感じらしいですね。メールも即レスってうわさを聞きましたよ」


「ああ僕は即レスですよ、基本。身内でも友だちでもね。でも好きな女性にだったら秒速、瞬速だよ。今度メールしていい?」


すごいな〜と感心していたのですが、これだ! っと感じたのです。


先輩はたしかにかなり美人です。が、正直、緊張感のないゆるめな米倉さんというイメージなのですが(毒舌くるみ)、ドカンと大胆にモテ男は、言い切っています。お世辞ばっかり! と思わせる時間をゆるさず、テレビ、ドキドキまで押しまくって相手をアゲ続けます。さらにメールのくだりでは、暗に気に入ったことをほのめかし、さらに押し続けています。


頭のいいみなさんなら、「そんなのでは機嫌がよくなるのかな?」と想像されるかもしれませんが、相手の反応を見ながらお世辞を言うのではなく、自信を持ってどんどん投げ続けることで、相手は屈服しやすくなるようなのです。そのときは、「相手が米倉さんにちょっと似ている」と感じたわずかな情報を、きっぱり言い切りなるべく大きく表現すること。言い切られると、相手もそれを簡単に受け入れてしまうのです。


お世辞だと見抜かれて「口ばっかりうまいいやらしい人だわ」と思われるのは、きっぱりと言い切らず、自分の言っている内容に迷いがあり、お世辞を言う自分に違和感があるからではないでしょうか。お世辞に対する罪悪感とも言えますね。


いずれによせ、相手ありきではなく、自分の違和感をぬぐうことを優先しているから徹底できないという側面もあるわけです。


しかし、結局は「彼女に好意を持ってもらう」という第一目標を達成するためのプロセスですから、目的達成への意思の強弱が、お世辞の強弱とイコールになるわけです。

  • 自信を持って思い切りおべっかを言う


私は別のフライトで早速これを試してみました。


クレオパトラに似ているめちゃめちゃ怖い先輩がいました。誰も寄せつけないオーラを放っているので、話しかける後輩はあまりいないですし、私もその一員だったのですが、お客様から、グッドコメント(細かい心遣いに対しての感謝状など)がものすごく多い方と聞いていたので、ぜひとも話してみたかったのです。


「誰も寄せつけないオーラ」というところを盛り気味に、お世辞に変えてトライしてみました。


「あの〜、少しお時間よろしいでしょうか? 実は声をおかけるするのにドキドキしてしまいまして。私がお見かけした先輩の中で、ダントツに素敵すぎる存在でいらっしゃったので、時間がかかりました!」


私はクレオパトラのスマイルを初めて引き出すことに成功しました。


お世辞を言うときは、なんか恥ずかしい、そこまでして! と感じがちですが、初対面でがっつりと相手の心に入り込むには、モテ男式の大胆なお世辞は有効です。決して嘘を言うわけではありません。相手の魅力をみなさんの力量で大胆にふくらませることが、相手の心をとらえるのです。