第2118冊目 CAの私が実践で学んだ 気持ちよく働く女性のエッセンス  高橋 くるみ (著)


CAの私が実践で学んだ 気持ちよく働く女性のエッセンス

CAの私が実践で学んだ 気持ちよく働く女性のエッセンス

  • 自分は組織に何を与えているかを考える


あるチーフは、機内であった小さないざこざや、自分が気に入らないCAの失敗を逐一マネージャー(チーフの親玉)に告げ口することで有名でした。


私などは、「サービスの後、お客さまのお下がりのチョコレートを他のCAといち早くじゃんけんして取りあっていて、どうかと思った」などと告げ口をされていて、笑ってしまいまいした。


そんなこまごましたことを、マネージャーがそのまま信じるわけがないと思われるかもしれませんが、そのチーフはかなり演技派でふてぶてしいうえに、しっかりマネージャーの心をとらえているので、全幅の信頼を得ているのです。そんな人っていませんか? いるはずです!


私が、口を堅くして仲良しのゲイCAに愚痴ってみました。


「あの人ひどくない? みんなの失敗を全部告げ口するって最悪だよ。あ〜、やだやだ。よくあんなのをマネージャーも信じて評価とか指導とかするよね〜」
「たしかにそうだけど、くるみはマネージャーに何を与えているわけ?」
「え? 何それ?」
「だってさ〜、あれだけチーフがマネージャーから買われているのは、それなりのモノを提供しているからでしょ。ま、提供している内容の質はどうかと思うけど」


そう軽く彼はいったのですが、「与える」という言葉に強く私は惹きつけられました。彼女がマネージャーに与えているものの内容(みんなの失態)や、そのやり方(告げ口)には到底教官はできないのですが、少なくとも私には、評価者であるマネージャーに何かを提供するという意識はなかったのです。


「きちんと仕事をしていれば、それに見合った評価がくだるはず」というのは正論ですが、正論ではなく理不尽がまかり通るのが職場というものです。正論は机上の空論とイコールであることは多いですよね。


恐らく、マネージャーも彼女の告げ口をうまく選別して、得た情報から必要なものを拾い上げているのでしょう(と、祈ります!)。


こういった女性を見つけたときには、彼女が組織に「与えているモノ」ではなく、「与える姿勢」を真似、彼女よりもハイクオリティなものを組織に与えること。そうすることで、彼女の与えたモノを無意味化することができ、根本的なやりにくさを撃退する術となるのだと気づいたのです。


彼女が与えているモノが、「おべんちゃら」や「無意味なものであればある程、私たちにチャンスが与えられているのです。


私はそれから、様々な仕事上の気づきを、人と絡めるのではなく、仕組みや機材の問題点に置き換えてチーフに報告したり、チーフの尽力で働きやすくなった機内の様子を報告するといったように、ほんとうに少しずつですが行動を変えていきました。


その後、「チョコ争いをしていた頃より成長したな!」と声をかけてもらい、初めて彼女に教わった、組織においての「与える姿勢」の重要性を感じたのでした。