第2068冊目 仕事を「すぐやる人」の習慣 「THE21」編集部 (編集)


仕事を「すぐやる人」の習慣 (『THE21』BOOKS)

仕事を「すぐやる人」の習慣 (『THE21』BOOKS)

  • 「解決すべき問題は何か」を最初に明確にする


仕事に必要な三つのスピード


――いったいどうすれば、内田さんのように「すぐ決めて、すぐやる人に」なれるのでしょうか。


内田 逆に一つ質問なのですが、「すぐやる人」になる最大の目的は仕事のスピードを上げることですよね?


――はい、そうですが……。


内田 その目的を達成するためにはどうすればすぐやる人になれるかの前に、何をすぐやるかを、まず考えるべきです。


どんなに早く取りかかれるようになっても、やるべきこと自体が間違っていたら、意味がありませんからね。


どんな仕事でも、何も考えずにいきなり取りかかると、やらなくてもいいことまでやってしまって、時間を大きくロスしてしまいます。ですから、「この仕事において、自分が決定しなければならない課題は何か」、そして、「そのためにやるべき作業は何か」を、最初に素早く見極めることが大切なのです。


このことがより直感的に理解できるジョークを一つ紹介しましょう。


ある男が友人と二人でサバンナを歩いて旅をしちえると、向こうから虎がやってきました。明らかに二人を狙っています。そのとき、男は急いで靴ひもを結び直しはじめました。


「虎より速く走れるわけがない。そんなことをしても命は助からないよ」


その友人がそういうと、男はニヤリと笑い、こういいました。


「キミより速く走ることができれば、僕は虎のエサにならなくて済むよ」


――なるほど。


内田 その男が賢かったのは、虎から助かるという目的の達成のために、「友人より速く走るためにはどうしたらいいか」という課題を設定したことです。それでも必ず助かるとはかぎりませんが、少なくとも、「虎より速く走るにはどうすればいいか」という課題を設定するよりは助かる確率が高い。素早くかつ正しく課題を設定する大切さが、これでよくわかるでしょう。


それから、じつはこのジョークには仕事に必要な三つのスピードが示唆されているのですがわかりますか。


――三つのスピードですか?


内田 はい。①問題発見・課題設定、②意思決定、③実行の三つです。「虎から身を守るために、友人より速く走るにはどうすればいいか」という課題を素早く設定し(①)、そのために「友人を犠牲にする」という非情な意思決定を素早く下し(②)、「靴ひもを結び直して友人より速く走る準備をする」ことを素早く実行する(③)、というわけです。


仕事を速く進めるには、①〜③それぞれのプロセスで精度をスピードを上げることが重要です。


ところが多くの人は、③の実行のスピードを速くすることばかり考えているのです。とくに若手ビジネスマンのなかには、エクセル分析を速くできる、プレゼン資料をテキパキ作成できるといった「実行=作業」が速いことが、仕事が速いことだと勘違いしている人が少なくありません。


でも、どんな作業のスピードを速くしても、そもそもの課題設定が間違っていたら、ムダな作業が大量に発生するだけで、仕事(=問題解決)のスピードは速くならない。「作業は速い人=仕事が速い人」ではないのです。


たんなる便利屋では出世は期待できない


――ただ、若手ビジネスマンは、上司から与えられた課題をこなさなければいけないことが多いですよね。


内田 たしかに、課題を自分ですべて決められないというのは事実です。しかし、課題を自分で見つけようという意識をもっていると、上司から課題を与えられたときでも対応がまったく違ってきます。


たとえば上司から、「新製品の企画提案をしてくれ」という指示だ出たとします。そのとき、課題設定の意識がない人は、「はい、わかりました」といって、すぐに企画案作成に着手する。


一方、課題設定の意識がある人は、「はい、わかりました」といったあとで、「ところで、今回の新製品企画の狙いはどのあたりにありますか」とすぐに質問します。それで、上司が「利益アップ」と答えた場合なら、「むしろコストカット策を出したほうが喜ばれるかもな」、「若手の士気向上」が狙いだと答えたなら
、「部内イベントを提案したほうがいいのでは?」などと考えることができるわけです。


いずれによせ、その指示の狙いを明確にしたうえで企画案を考えた場合と、それを明確にしないで企画案を考えた場合とで、どちらがより速く、より上司の期待に応えるものをアウトプットできるかは明らかでしょう。もし上司に質問できなかったり、聞いても教えてくれなかったりした場合でも、「この企画は何のため?」と自分なりに仮説を立ててから取りかかるべきです。


――「つべこべいわずに早くやれ」と、いわれそうな気もしますが……。


内田 若いうちなら、作業のスピードが速いだけでも、便利屋として上司から重宝されるかもしれません。しかし、作業が速いだけでは、役員まで出世はできないでしょう。マネジメント層に求められるのは、エクセルで速く表をつくる力ではなく、何が問題かをいち速く見極め、解決策を即決する力だからです。別の言葉でいえば、「すぐに作業にかかる人」ではなく、「何を解決すべきかを即決できる人」が求められるのです。


課題設定・意思決定のスピードというのは、自分で仮説を立てて、その結果を検証するという経験のなかでしか身につかないもの。当然、仮説が間違っていても痛い思いをすることもある。だからこそ、、若いうちから鍛えておく必要があるのです。社長になってから間違っていたら、遅すぎますからね。