第2066冊目 世界一わかりやすいプレゼンの授業  五十嵐 健 (著)


世界一わかりやすいプレゼンの授業

世界一わかりやすいプレゼンの授業

  • プレゼンの全体像を見直す


聞き手が受け取りやすい「流れ」をつくる


コンテンツの修正がすんだら、あとは最後の仕上げを残すのみですね。レッスン6では、あなたのプレゼンテーションの全体像を見直すことで、ベストなプレゼンテーションに仕上げます。


テーマは、


「完成したコンテンツを聞き手にどうのように届けるべきか」


です。


すでにお伝えしたとおり、ほとんどの人は、プレゼンテーションをやることになったとき、自分の所有する知識や経験をベースに考えてしまいます。すでにあるデータを寄せ集めて、パワーポイントをつくりはじめるのです。


そうなると、どうしても自分都合のプレゼンテーションになったり情報量が多すぎて、かえってわかりずらくなったりするのがオチでした。


本書ではこれまで、プレゼンテーション上達のために、2つのアプローチで改善を図ってきました。


1つは、プレゼンター自身のレベルアップです。


自分がどのように聞き手に観られているかを知ることで、どのように聞き手と向き合わなければいかないのかを理解し、印象のコントロールを軸に、理想の自分像をつくりあげ、それを実践する。


まだまだ上達の途中ではありますが、これらができていれば「上手に見えるプレゼンター」になれているはずです。


2つ目は、コンテンツからのアプローチです。


プレゼンテーションの目的を明確にし、ポイントに沿って修正することで、聞き手にとって魅力あるコンテンツを作成することができるようになりました。


つまり、プレゼンターの見映えが良くなり、プレゼンテーションのコンテンツの完成度も上がっている状態です。


最後は全体像を整えて、相手に受け取りやすい「流れ」に仕上げるのです。


聞き手の「事情」だけでなく、「感情」も意識して設計を行うことが大切です。


あなたのプレゼンテーションのゴールは、伝えることではありません。
聞き手を動かして、はじめて達成するのです。

  • 小さなモジュールに分けて考える


プレゼンテーション設計では具体的に何をするかというと、まずはあなたのプレゼンテーションをいくつかのモジュールに分けていただきます。



モジュール分け?


と言われてもピンとこないかもしれませんが、こういうことです。
あなたのプレゼンテーションをひとつの大きな塊でとらえるのではなく、小さなプレゼンテーションの集まりだと考えるのです。


私の研修も、ある意味ひとつのプレゼンテーションだといえます。


プレゼンターである講師の私がいて、聞き手として受講生がいます。
限られた時間で受講生のスキルを向上させるという目的もあります。


実は、今お話している私のプレゼンテーション研修も、小さなモジュールに分けられているのです。思い出してみてください。


レッスン1「アイスブレイク」のモジュール
レッスン2「プレゼンテーションの定義」のモジュール
レッスン3「印象のコントロール(I am 自己紹介)のモジュール
レッスン4「アイコンタクト」のモジュール
レッスン5「コンテンツの魅せ方」のモジュール


どうですか?


書籍であれば、章立てになっているからわかりやすいですね。


実際の研修やプレゼンテーションでも、このようにモジュールに分けることができるのです。


主催者から、
「すみません、当初は3時間の講演予定だったのですが、急きょ1時間短くなってしまいました。すみませんが、対応をよろしくお願いします」
などと、本番直前に言われた場合。


プレゼンテーションでもよくありますよね。会議が押したばかりに時間がなくなって、「手短にやってくれ」などと言われるシーン。


そのときに、大きなひとかたまりとしてしかプレゼンテーションを用意していないと、パニックになって、とりあえず早口でごまかそうとしてしまいますよね。


それでは、焦っている感じがすぐに伝わってしまいます。


そんなときも、モジュール分けがしっかりされていれば、聞き手の状況を確認した上で、モジュールの数を減らすことで対応ができるわけです。


研修でいえば、受講生のレベルや習熟度を確認することで、「自己紹介のモジュールはいらないな」と判断したり、「ワークのモジュールを2回から1回に変えよう」ということがたやすくできるのです。


時間が短くなった、逆に長くなった、ということに、速やかに対応できれば、現場で慌てる必要もなく、かつ無茶な依頼をしてきた担当者を安心させることもできます。

  • ボリュームと順番を決定する。


事前準備段階でしっかりモジュール分けを行い、その上で調整をしておきましょう。


調整とは、具体的には2つのことを行います。


①ボリュームコントロール
②順番決め


①「ボリュームコントロール」とは、そのモジュールの大きさを決めることです。プレゼンテーションでいると、時間を決めること。


たとえば、自己紹介のモジュールに何分かけるのか?


研修などで、受講生に自己紹介をさせる場合、20名で1人1分としたら、それだけで20分。入れ替えの時間や、質疑応答などを入れるとその倍。というように、まずはざっくり必要な時間を出してみます。


そして、その時間が、全体の時間数やその研修の趣旨と照らし合わせて多いか少ないかの判断をします。少ないと判断すれば、1人の時間を1分から2分に変えるなど、調整をします。


プレゼンテーションも同様に、全体の時間が決まっています。
それより短くても、オーバーしても、良い印象は残りません。
したがって、


そのモジュールは、どのくらいの時間がかかるのか?
時間が押したときに、そのモジュールは削除できるのか?
それとも、ほかのモジュールで調整するべきなのか?
ということをあらかじめ考えておく必要があります。


このように、ボリュームを自由に変えることができると、現場での不慮のトラブルにも対応しやすくなります。


次に②「順番決め」ですが、これは全体ができあがったとき、どの順序で話すのがいちばん伝わりやすいかを、実際にモジュールを並べ替えて、シミュレーションしながら決めていきます。


私もよくやっていました。


パワーポイントの資料をプリントアウトして、床に並べます。
それを俯瞰で眺めて、聞き手がプレゼンテーションを受けているシーンを想像します。
そして、それぞれのボリュームや重要度などを考慮して、スライドを並べ替えるのです。


そうすると、
「このモジュールを冒頭にもってくると、たしかにインパクトはあるけれど、聞き手は理解できるだろうか?」とか、
「このモジュールに関心をもってもらうには、その前に別のモジュールで情報を提供しておかないと、無理があるのでは?」
というように、全体的な視点でプレゼンテーションを見直すことができるのです。


そして、実際にモジュールの順番を入れ替えて、練習してみます。


自分が言いやすい順番、聞き手が受け取りやすい順番、いろいろ試してみて、最終的な順番を決定するのです。