第1991冊目 カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本) [単行本] オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


イメージを描く


ゴルファーのジャック・ニクラウスは、練習中でも必ずイメージを描いてからショットを打つ。プロのアスリートは昔から、イメージトレーニングを重要なツールと考え、自分が勝つ場面を何時間も想像することも少なくない。体がどんなことを達成しようとしているのか、心に言い聞かせるのだ。


「自分がある行動を取るところをイメージすると、実際にその行動をする際に使われる脳の部位が活性化されることは十分に証明されている」と、スタンフォード大学・行動科学先端研究センター所長(当時)のスティーブ・コスリン教授は指摘する。だからこそ、イメージトレーニングは効果が高いのだ。アスリートのなかには、徹底したイメージトレーニングの後に、実際に肉体的な疲労を感じるという人もいる。さらに、イメージを描くことで、脳の構造が物理的に変わるときもある。繰り返し行われた実験から、自分がピアノを弾いていることを何度も想像すると、脳の運動皮質に測定可能な変化が検出されることがわかっている。


脳はとても変わりやすい。ある程度の年齢を過ぎると、脳の機能は、パターン化されるという考え方は、現在では完全に間違っていることが証明されている。私たちは脳を使うたびに、特定のニューロンの結びつきを刺激している。これらの結びつきは、脳を使うほど強くなる。精神的なプロセスを一定のペースで繰り返すと、そのプロセスはしだいに強化される。つまり、ある精神的傾向を意識して定着させ、強化することもできる。


精神液な準備を整えるテクニックは、ハリウッドでも広く使われている。これは「メゾッド」と呼ばれる演技法で、ショーン・ペンメリル・ストリープロバート・デ・ニーロマーロン・ブランドポール・ニューマンなど名だたる俳優の多くが実践している。


メソッド演技法は、適切なボディランゲージが自然に出るようにするという演技の最も難しい部分のために開発された。ボディランゲージをできるだけ意識してコントロールしようとしても、疲弊するだけでなく失敗に終わる。どんなに訓練を積んでも、自然なボディランゲージを完ぺきにコントロールすることは不可能なのだ。内面の感情が、周囲に見てほしい自分の姿と合致していなければ、遅かれ早かれ心の奥底の思考や感情が外に表れるだろう。


そこでメソッド演技法は、異なる観点から取り組む。ボディランゲージをコントロールしようとするのではなく、ボディランゲージの源――心――に直接アプローチするのだ。俳優は演じる役になりきり、観客に伝えたい感情を実際に追体験する。そうすれば、それにふさわしい無数のボディランゲージが自然に流れ出るというわけだ。


イメージトレーニングの効果は精神的にも生理的にも強力で、カリスマを高めるツールとしてもとりわけ有効だ。適切なイメージトレーニングは、内面の自信と、それを伝える能力を高めるために役に立つ。適切なイメージを思い描くだけで、自信に伴う連鎖反応が全身を駆け巡り、どんなボディランゲージも自然に出るだろう。


そこで、精神的な状態を変えたいときに利用できるイメージトレーニングの手順を学ぼう。ここでは自信をイメージする練習だけが、誠意や共感、落ち着き、平穏といった精神状態になるエクササイズものちに紹介する。