第1985冊目 その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』 [単行本] 矢野香 (著)


その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』


「笑顔の消し忘れ」をしない


過剰な笑顔の演技は、「笑顔の消し忘れをしている」ということです。人前では笑顔で、という心構えは素晴らしいことです。しかし、つねに笑顔のスイッチを入れたままにしていませんか。


この笑顔のスイッチは、私もつい最近までやってしまっていた過ちでした。とある方から指摘されて気がついたのです。その方は、数々の著名人のブランディングを手がけたプロデューサーで、人の特徴や正確、強みを瞬時に見抜く力をお持ちです。初対面で会ったときにこう言われました。


「矢野さんって、口にいつも力が入っているよね」


私が「え」と驚いた顔をすると、「ほら、顔も口に力が入っている」と指摘され、手で口を触ってみましたが、よく意味がわかりません。気になったので、それからしばらく、いろんな人の口元を観察し続け、自分の口と比較してみたのです。


そして、気がついたのが、笑顔を消し忘れている自分の口でした。


これは男女問わずやってしまっている無意識のクセで、私たちアナウンサーをはじめ、接客や営業の方に多く見られる傾向です。しかも、若手ではなて、ある程度のキャリアを積んだ人たちが、笑顔でいることがクセになって、取れなくなってしまっているのです。


上の白い歯を8本見せた完璧な笑顔が顔にはりついたまま消えない。糊を使って唇を固定しているのではないか、と思うほど笑顔が続く方もいます。話すときも笑顔、相手の話を聞くときも笑顔。いつ見ても笑顔、笑顔、笑顔……。


そこには、完全に意図的な演技性を感じます。般若の面のような迫力すら感じることもあります。


一度しか会わない相手であれば、笑顔がある人、として好感を持ってくれるでhそう。一期一会の接客ならそれでよいのです。


しかし、何度も会う相手であれば、会う度にいつも同じような完璧な笑顔を浮かべていたのでは、相手はその笑顔を疑い始めます。


「この笑顔は心からのものではないな」「この人は腹ではどう思っているかわからないぞ」と警戒心を持ち、あなたの言動を信じてくれなくなるのです。つまり、良かれと思ってやっている笑顔が、反対に相手を遠ざけているのです。


四六時中笑顔でいると、「へらへらしていて何も考えていないような軽い人」と思われるか、または、「心を許せない腹黒い人」と、思われてしまいます。


そうならないために、笑顔を出したら消しましょう。


私は笑顔のスイッチを消すことを心がけるようになってはじめて、仕事でお会いした方から家族ぐるみのお付き合いに誘われました。プライベートの領域に仕事で知り合った私を入れてくださったのです。


いままでは仕事でご縁があった方の家族に会うことはほとんどありませんでいた。笑顔スイッチを消すことで自然体になり、結果、人として信用していただけたのだと理解しています。


笑顔のスイッチを切り替える箇所は、話し始めと終わりです。


(ニコッ)「こんにちは、お久しぶりですね」(消す)
(消えている)「それはよかったですね。おめでとうございます」(ニコッ)


もちろん、パチンとスイッチを消すように、急に笑顔が消えてなくなったしまうのも演技臭くなる原因です。徐々に消していきましょう。


笑顔にも「大中小のサイズ」があります。数にすると8、4、0。笑ったときに見える上の歯の本数です。大スマイルは8本、中スマイルは4本見える笑い、小は歯が見えない笑いです。


明るさが段階的に切り替わる照明器具のように、会話の中で笑顔も切り替えましょう。この段階を経ずに、消灯状態のムスッとした顔から、急に全灯状態の思いっきり笑顔になったり、全灯の笑顔のままサイズが変わらなかったりすると不自然なのです。意識するだけで印象が見違えますので、お試しください。