第1938冊目 「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント [単行本] ジェリー ワイズマン (著), Jerry Weissman (原著), 武舎 るみ (翻訳), 武舎 広幸 (翻訳)


「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント

「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント

  • 作者: ジェリーワイズマン,Jerry Weissman,武舎るみ,武舎広幸
  • 出版社/メーカー: ピアソン桐原
  • 発売日: 2012/12
  • メディア: 単行本
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即答は命取り 薄れつつある「傾聴」の習慣


ビジネスを成功させるうえではとても重要であるのに、やっかいな質問をさばこうとすると妨げになってしまう要素があります。それは「すばやい対応」です。ビジネスマンたるもの、何らかの問題が生じれば、即座に対応し、解決策をすばやく提案することが求められます。ところがやっかいな質問に答えるときには、この姿勢が命取りになることがあるのです。


やっかいな質問はビジネスにはつきものですが、サブプライム・ローンの焦げつきが深刻化して大不況が始まってからは、従来よりさらに手厳しい質問が増えています。だれもかれも人生のあらゆる局面で問題を抱え、その答えを模索しているため、感情的な質問も飛び出してくるわけです。それに対して、答える側も感情的になり、身構えたりせっかちに反論したりすれば、たちまち「交戦状態」となって、雰囲気はますます悪化してしまうでしょう。これでは、双方が特をする「ウィン・ウィン(Win-Win)の関係ならむ、双方が損をする「ルーズ・ルーズ(Lose-Lose)の関係になってしまいます。


やっかいな質問にどうしないような準備をしておこうと考える人がよく作るのが「無礼なQ&A」と呼ばれるリストです。やっかいな質問をあらかじめ想定してリストアップし、各々について妥当な回答案を用意しておくのです。ただ、このアプローチにはちょっとした欠点があります。長くてとりとめのない複雑な文章となって発表者に投げかけられる、という点です。そのため回答者はなんとか無難に答えられれば上出来で、場合によっては誤った答えを返してしまいます。


これを解決するには、まずはブレーキを踏んで急停止し、「答え」について考えるのをやめてください。先に進まず、「今この瞬間」に集中するのです。そして、質問者の言葉に注意深く耳を傾け、相手が繰り出す複雑な文章に埋もれている質問の要点を把握しましょう。


「耳を傾ける」とは、意外でしたか? 現代社会では「相手の言葉にじっくり耳を傾ける」習慣が失われつつあります。それで礼儀知らずと見られたくない人は耳を傾けるフリをしますが、それは自分が話す順番をまっているのにすぎません。耳を傾けることなど気にもかけない人は(悲しいかな、そういう人が増えています)、次に話す人を差し置いて、自分の言いたいことを言うだけです。


結果を重視するビジネスマンにとっては、耳を傾ける行為が重要とは感じられず、難しいと思うもしれません。しかし、これは必要欠くべからざることなのです。耳を傾けるという単純なことができなければ、プレゼンテーションや会議の場で質問にうまく答えられず、事業案全体がボツになってしまう、といったことにもなりかねません。


プレゼンテーションでだれかに質問されたら、古代ギリシャの哲学者エピクテトスのものとされる古い格言に従ってください。「神はれわれれ人間に舌を一枚、耳を二枚与えたもうた。話す量の倍は耳を傾けろということだ」


結局、最善の解決法と言えるのは「積極的傾聴」です。要は「質問をされているときには、答えを探すことではなく、質問の要点を把握することに意識を集中せよ」というテクニックです。


さあ、相手の話をよく聴きましょう。