第1385冊目 「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント [単行本] ジェリー ワイズマン (著), Jerry Weissman (原著), 武舎 るみ (翻訳), 武舎 広幸 (翻訳)


「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント

「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント

  • 作者: ジェリーワイズマン,Jerry Weissman,武舎るみ,武舎広幸
  • 出版社/メーカー: ピアソン桐原
  • 発売日: 2012/12
  • メディア: 単行本
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ミュージシャンとスポーツ選手に学ぶ 練習を重ねて自由自在の妙技を


ミュージシャンやスポーツ選手の巧みなパフォーマンスは、プレゼンテーションの発表者には大いに参考になります。ここで紹介したいミュージシャンは、ジャズピアニストのアート・テイタムとバイオリニストのヤッシャ・ハイフェッツです。それからダンサーのフレッド・アステア、野球界からはスーパーヒーロー、ジョー・ディマジオ、それに凄腕の空中ブランコ乗りたちです。この人たちは、いずれも自由自在のパフォーマンスを披露したことで知られています。空中ブランコ乗りの言い回しを借りれば、「安全ネットなしでOK」の達人の領域に達していたのです。これを商談成立の可否がかかる大事なプレゼンテーションに重ねて合わせてみると、「聞き手の前に立ち、自信に満ちた態度で売り込みを行う」といった状態でしょう。ただし「言うは易く行うは難し」。といのも、ミュージシャンやスポーツ選手たちがって、プレゼンテーションの発表者は「パフォーマンス」をするわけではないからです。


ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のコラムを担当している演劇評論家テリー・ティーチアウトは、ユーチューブに投稿されているアート・テイタムの一九五四年の演奏ビデオ「イエスタデイズ」について次のように論評しています。


目をつぶって聴いていると、だれかが連発式の爆竹に火をつけて、あのスタインウェイのピアノに投げ込んだみたいな気がしてくる。目を開けると、民事訴訟で証人を記録している法廷記者のように見えてくる。


ティーチアウト記者は、さらにバイオリニストのヤッシャ・ハイフェッツの自在な弾きっぷりについて、こう書いています。「(ハイフェッツは)その途方もない技巧の離れ業を、ほほ笑み一つ浮かべるでもなく、ごくさりげない様子で見事にやってのけてしまった」


フレッド・アステアジョー・ディマジオも、迫力のあるパフォーマンスを完璧かつ優美にやってみせることで有名でした。


このように「はたから見ると自由自在に」プレゼンテーションをやってのけるにはどうしたらよいのでしょうか。その答えは、ショービジネスにまつわる古いジョークにあります。あるときニューヨーク市にやって来たお上りさんが、通りにいた男を呼び止めて尋ねました。「カーネギー・ホールにたどりつくには、どうすればよいでしょうか?」。するとその男はこう答えたのです。「練習を積むのさ」


プレゼンテーションで練習を積む最良の方法といえば「声を出してのリハーサル」です。これについては第13章の「スパニッシュペイまでの道でできること」で詳しく説明しました。実際に聴衆の前で話すときのようにして、何度も何度も声に出して練習するのです。これを繰り返しているうちに、皆さんも「自由自在に」話せるようになるでしょう。その昔、「不動産では、一にも二にもロケーション」という教訓がありましたが、プレゼンテーションでは「一にも二にも声を出しての練習」なのです。