第1353冊目 パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術 [単行本(ソフトカバー)] マーティン・ニューマン (著), 小西あおい (著)

パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術

パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術


「第一印象」の評価を変えるのは難しい


私が考える「第一印象(ファースト・インプレッション)」とは、初対面の人と最初に共有した一定の時間内に受けた印象を指します。挨拶程度だったら、30秒ぐらいかもしれないし、場合によっては30分、あるいは1時間以上のケースもあるかもしれません。


初めてその人と共有したトータルの時間で、第一印象は形成されていきます。一瞬の見た目だけ、会話を初めて10分後まで……など機械的に区切れるものではないのです。


しかし、ビジネス関係でプレゼンテーションをする場合などは、聴衆はスピーカーであるあなたが目の前に登場した時点、つまり話を始める前の段階で、あなたがどういう人かをある程度、判断しているのです。


プレゼンテーションは、一対一や少人数でお互いの意思の疎通を図れる通常のコミュニケーションと違い、スピーカーからの一方的なコミュニケーションです。いわざ不自然なコミュニケーションゆえ、聴衆はあなたをぱっと見た目で判断せざるを得ないのです。


マルコム・グラッドウェルの「ブリンク」(邦訳第1感――最初の2秒のなんとなくが正しい)という本に、「まばたきひとつするタイミングで、人の印象は決まっている」と書かれています。


「最初の2秒」という時間の制約について、興味深い話を日本のある技術者の方から聞きました。デパートや新幹線の車両にある電光掲示板は、日本語では7〜8文字、アルファベットならその倍の量が「2秒」で処理されるように設計されているそうです。なぜなら、それが人間の平均的な視覚探索能力であるからだというのです。


人は文字情報を2秒で認識しますが、1962年のバーツ博士の研究では、顔の表情などのビジュアル情報は、20万分の1秒で認識されると報告されています。私たちはまばたきより速く、視覚から得た情報で、印象=雰囲気を判断しているのです。


あなたがプレゼンの場で、最初に、聴衆に与える印象は、その後のコミュニケーションに影響する非常に重要なものと私は考えています。


「真面目そうな人だ」「つまらない話になりようだ」「テンション高そう」……。


聴衆たちはこのような勝手な先入観を持ってあなたを見ています。


もちろん、話を聞いているうちに、「思ったより面白いかも」「思っていたよりつまらない」などと聴衆の評価も変化していきますが、結果的には、最初に受けた印象と対比で、聴衆はあなたの総合的な印象を決めているのです。


だから、相手の目の前に立ったとき、最初の出会いでどんな印象を与えているか、を意識することが、最優先事項です。


先入観で生まれた印象は、その場の雰囲気も変えてしまいます。スピーチを始める前の雰囲気づくりも、プレゼンテーションを成功に導く大事な下準備なのです。


しかし、第一印象と、キャラクターというのは違います。


第一印象は、その後話しているうちに、「あ、この人はこういう人なんだ!」という気づきとギャップで、よくも悪くも相殺されていきます。その繰り返しを経て、最終的なその人のキャラクターが形成されていくのです。


第一印象が悪くても、会話を交わすうちに第一印象より好感度が上がる人もいます。その反対に、第一印象はよかったのに、何度も会って話をしていくうちにイメージダウンする人もいます。


この両者を比較した場合、話す内容が一緒であれば、前者のほうが好感が持てるのでは? という考え方も成り立ちますよね。


これはきわめて日本人的な考え方だと私は思います。


いろいろな考え方はあるによせ、自分をアピールする機会がどれだけあるかがポイントになってくるはずです。


時間がいくらでもある状況では、誰でも一生懸命にアピールさえすれば、ある程度は自分のよい部分を伝えられるでしょう。しかし、例えば、「集団お見合い」のような場面で、ひとりの持ち時間が5分しかなかったら、題意陳勝で相手はあなたのほぼすべて、人柄さえも決めてしまいます。相手に与えたい印象を最初から伝えられる人が勝っていくのです。


もちろん「最初は印象があまりよくなかったけれど、本人についてよく知ってみれば、本当はいい人だった」。別にこれが悪いわけではありません。


しかし、一般論としては、最初の印象がよかった人の評価が下がるまでにはかなり長い時間を必要としますが、逆に、最初の印象が悪かった人の評価が上昇に転じるのにも、ある程度長い時間がかかるということです。


基本的には、最初のごく短時間のあいだに、いかに自分が理想とする「よい印象」を相手に受け取ってもらえるかがポイントです。常に「チャンスは最初の一時で決まる」と肝に銘じて、最初からフルスロットルで行くべきなのです。