第1352冊目 パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術 [単行本(ソフトカバー)] マーティン・ニューマン (著), 小西あおい (著)


パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術

パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術


あなたはまったく違う人間に見られている


まず、これだけは覚えておいてください。


あなたが心の中で思っている自分の姿と、あなたが周囲に与えている印象は、まったく違っている可能性が高いのです。ひとつ、具体的な例を挙げましょう。


英国ボーダフォン最高経営責任者(CEO)、ビットリオ・コラオ氏が私にトレーニングを依頼してきたのは、CEOに就任する前のことでした。彼は自転車競技を趣味にしていて、山岳レースなどでまずまずの好成績を収めるなど、本格的にのめり込んでいました。


超一流のビジネスマンである彼の自転車レースに没頭する姿をカメラに収めようと、テレビクルーが密着取材をしていたときのことです。レース後のインタビューに答えたコラオ氏は、レースはとても気持ちよく走ることができたし、自分でも満足のいくタイムを出した。その喜びと満足感に満ちた現在の気持ちを、余すところなく視聴者に伝えられただろう、と、内心、非常に満足していたそうです。


ところが後日、親しい友人から「君のインタビューがユーチューブにアップされているよ」と言われて動画を観たコラオ氏は、愕然とします。ユーチューブには、彼がひそかに期待していたような、喜びを爆発させるエネルギッシュで魅力的な人物、など、どこにも見当たりませんでした。画面には、死んだ魚のような目をした冷酷そうな男の姿が映っていたのです。


そのとき初めて彼は、自分が思い描く自分と、他者から見た自分がいかに違っているか、に、はっきりと気づきました。「今回のレース後のインタビューが特別なケースではない。毎日の生活の中でも同じように、他人には、自分の想像とはまったく違った人間に見えているのだ」と悟ったのです。


以後コラオ氏は、「自分が思っている自分のイメージと、他人が思っている自分のイメージを近づけるにはどうしたらいいか?」と考えるようになりました。それはコラオ氏が、今後ビジネスリーダーとしてさらにキャリアアップするうえで、必ず改善すべき事柄のひとつでもありました。そういう経緯があって、彼は私の指導を受けに訪れたのです。


あなたも、まずコラオ氏のように、自分が周囲に与えたい印象と、実際に与えている印象がどれだけ違うものか、ということに気づくことが大切です。


それこそが、この「パーソナル・インパクト」のトレーニングのスタートになると、私たちは考えています。