第1280冊目 ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた (知的生きかた文庫) [ペーパーバック] ジョン グレイ (著), John Gray (原著), 大島 渚 (翻訳)



会話の説得力は「間の取り方」でこうも違ってくる


たとえばあなたが、なぜ実行しなければならないかを納得させるために激しい論争を展開していくとする。その結果、彼がイヤイヤ実行してくれたとしたら、やはり気分はよくないだろう。彼はあなたに対する反抗心を募らせているに違いない。この次に何か頼み事をする時には、より反抗的な態度を示してくるだろう。


したがって、彼にあなたの頼みや要求を叶えるチャンスを与えたいと思うのなら、自分の希望を伝えた後に、間を取ることが大切になってくるのである。自分は口をつぐみ、ただ相手の言葉に耳を傾けるようにする。そうすれば、彼は必ず「YES」と言うのだ。


くれぐれも、彼が抵抗を続けているのは、あなたに対する反発からきているのではないということを覚えておこう。あなたが彼に対して論争をふっかけたり、あくまでも自分の主張を押し通そうとしない限り、彼はあなたに反発しようがないではないか。


たとえ換えが反発的な態度のままあなたの目の前から立ち去って行ったとしても、彼は必ずあなたの頼みを聞いてくれるはずである。もし、二人がお互いにそれを実行するか否かはすべて彼の選択しだいであることを充分に認識し合っているのなら、必ず実行してくれるようになる。


「なぜ君ができないんだ?」
「ぼくには本当に時間がないんだよ。頼むから君がやってくれないか?」
「ぼくはものすごく忙しいんだ。本当に時間がない。ところで、君はいったい何をしているんだい?」


このような質問は、たいてい単なる誇張的なものにすぎない。だから、あなたは沈黙を守り通せるはずである。彼が本当にあなたの答えを必要としていることが明らかな時以外は、けっして口を開かないようにしよう。


もし、彼が本当に答えを必要としている時には、可能な限り簡潔に答えることが大切である。あれこれとよけいな御託は並べない。単純明快な答えを一つだけ、スパッと返してあげればいい。そして、その後で再び要求する。


第三段階で相手に要求する頼み事は、あなたの内側で確信が持てるものばかりのはずである。「このくらいのことは彼にやってもらって当然だ。彼もまた、わかってくれれば必ずやってくれる」と心中密かに自信を持って要求できなければならない。


もし、彼が「NO」と言ったり質問を返してきたりした時には、自分が要求していることは、彼がいま神経を集中させていることと同じくらいに大切なのだというメッセージを、手短な返答の中で伝えるのだ。そして、もう一度あらためて要求する。


けっして相手の言うことに対して反発的に答えるわけでもなく、正当な理由を述べて納得させるわけでもない。ただ単に、相手の反発に対してうまく調子を合わせているだけにすぎない。


もし、彼が疲れているのなら、「私のほうがもっと疲れている」という理由をあれこれと並べ立てて無理強いしてはならない。あるいは、彼が忙しいようなら、けっして自分のほうがもっと忙しいなどとクドクド説明して納得させようとしてはいけない。「なぜ彼がやらなければならないのか」という理由を並べ立てるのだけはさけよう。あなたは単に頼み事をしているのであって、けっして命令しているわけではないのだ。


もし、彼が抵抗し続けてくるようなら、第二段階へ立ち戻り、彼の拒絶反応を快く受け入れるようにする。そういう時は、あなたがいかに失望しているか、その気持ちを伝えるのには適切なタイミングではない。


このような時に、あなたが思いやりある対処をして愛情の強さを印象づけておけば、彼はその次に何か頼み事をされた時には、より積極的に助けてくれるようになる。


このように、あなたが時と場所に応じてバラエティに富んだテクニックを使い分けられるようになると、彼からの手助けや協力を思い通りに取り付ける確率は高くなっていく。


たとえ、あなたが第三段階で学んだ、賢明な間の取り方をちゃんと使っていたとしても、時と場所によっては第一段階と第二段階に立ち戻り、臨機応変に使い分けていかなければならないのだ。言い換えれば、あなたはけっして遠慮をしたり恐れたりすることなく、適切な方法で援助や協力を求めていくべきなのだ。そして、場所によっては相手の拒否を気持ちよく受け入れる必要があるということである。