第1278冊目 その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』 [単行本] 矢野香 (著)


その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』


疑問を持つことで、三つの効果を得られる


第一印象の大切さは今更申し上げるまでもありません。心理学で初頭効果といわれるように、第一印象の影響はとても強く、最初に好印象を与えた人はその後の行動もなにかにつけてよく解釈されますが、悪印象だった人はその後も悪い方に捉えられてしまう傾向があります。


人前に出るときの第一印象で、クラス感を表現し、「この人できるな」と一目置かれる登場の秘訣とは何か。


それは、人前に疑問を持って登場することです。


例えば、スピーチを頼まれたとします。司会者に「続いては○○さん、どうぞ」と紹介され、自分の席を立ち上がる。お辞儀をしながら前に進み、壇上の中央に置かれたマイクの前で、もう一度礼。顔を上げると、そこにはこちらに注目した人の顔、顔、顔。緊張して冷や汗がドッと出た。そんな経験はありませんか。


この時点で、聞き手に与えた第一印象は、「スピーチでドキドキしている頼りない人」です。一言も発していないのに、すでに聞き手には印象が形成されているのです。


そうならないためには、どうすればいいか。


疑問を持って人前に出ればよかったのです。


これによって得られる効果は三つです。まず、アイコンタクト、次にアイブローフラッシュ、最後に笑顔です。


疑問とは、いままでは、客席から前方を見ていたからわからないことの答え、マイクの前から客席を見るからこそ解決する疑問です。


「今日は何人ぐらいの人が集まっているのかな」


「最前列の人は男か、女か。どんな顔かな」


「後ろの人は立ち見なのかな、席が足りているのかな」


これらの疑問を抱きながら、マイクの前に立つのです。


人間の脳のなかに疑問を持つと答えを探します。そのため、あなたの目は、マイクの前に立った瞬間、最前列の人から後方の人までをジッと見つめます。


最前列の人が男性か女性か、後ろの人は座っているのか立ち見なのか、こうした答えを探すためです。この行為は聞き手から見ると、集まった人たちとしっかりとアイコンタクトをとったように見えるため、堂々とした自信ある本物のクラス感を印象づけることができます。


またアイコンタクトに加えて、「アイブローフラッシュ」をすることができます。一瞬、眉が上がるのです。人間は、疑問に対する答えがわかった瞬間、眉が上がります。非言語的なメッセージとしては好意、興味、発見、喜びのメッセージを示します。


例えば、お腹がすいたときに何かないかと冷蔵庫を開け、なかに思わぬ好物が入っているのを見つけたとしたら、この瞬間、「あっ!」と喜んだときのあなたの眉毛はどうなっていますか。


「あっ!」のときに、わずかに上がったはずです。アイブローフラッシュをすること、つまりマイクの前で眉を上げることで、聞き手に対し、「私はあなたの前で話すことが嬉しい」と思っているような印象、親近感を与えることができます。


そして最後に笑顔。疑問に対する答えがわかったとき、嬉しさとホッとして喜びから自然と笑みが浮かびます。わざとらしいつくり笑顔ではありません。聞き手に余裕を印象づける笑顔です。


人前に出るときに、アイコンタクトをとって、眉を上げて、笑顔で出る。こう考えると、それだけで頭がいっぱいになり、肝心のスピーチ内容を忘れてしまうかもしれません。人前に出るときは、そのようなテクニックは何も考えず、頭のなかに疑問を持って登場するだけでよいのです。話の途中も何も考えることはありません。登場シーン、最初だけ疑問を持てばよいのです。